同じメニューでも、せかせかと口を動かして食べたときより、ゆっくり味わって食べたときのほうが美味しく感じられるものです。
せっかく美味しいご飯を食べているのに、味わう間も無く、次を口に入れるのはなんだかとてももったいないですよね。
食べ物の話なら自然とそう思えても、私たちは、心の栄養になる「ポジティブな感情」に対して、そういう扱いをしていることが多いような気がします。
ポジティブな感情は、心に落ち着きをもたらし、視野を広げ、他者への思いやりの源となり、明るい展望を描き、それに向かって行動する活力を与えてくれます。
しかし、ポジティブな感情をもたらす事柄と、ネガティブな感情をもたらす事柄が同時にあると、私たちの本能は危険に備えようとするため、ネガティブな感情をもたらす事柄のほうに注意が惹きつけられてしまいます。
大好きな恋人と一緒にいても、些細なことがきっかけで、その人と別れることになるのではないかと不安になったり。
一大プロジェクトを成し遂げても、次はこううまくいくとは限らないと、起こるかどうかわからないリスクに目を向けたり。
最高のパフォーマンスができても、自分の実力はここがピークで、もう同じような成功を収めることはできないのではないかと、先を悲観したり。
それは、先に述べた私たちの「危険に備える」という生存戦略でもあるため、簡単に変えることはできません。
だからこそ、意識して「今ここにあるポジティブな感情」にとどまることが大切です。
先のことを考える作業は、一旦棚上げして大丈夫です。
今の幸せ、今の喜び、今の達成感、今の充足感を、それこそ美味しい食事を食べるときのように、じっくりと味わってみてください。
このときは、普段よりゆったりと呼吸をしたり、目を閉じて自分の内側の感覚に目を向けたり、立ったままではなく身体をゆったりと預けられる椅子に腰を下ろしたりして、いつもよりペースを落とすことも役に立つでしょう。
そうしていると不思議と、今後どうしていきたいかというアイデアも湧いてきます。
ポジティブ感情にゆったりと浸ることは、楽観してリスクに備えないこととイコールではありません。
むしろ、より広い視野で、よりクリアな見通しに基づいて、この先の行動を決めることにつながります。
今感じているポジティブ感情は、明るい未来の元になる、心の栄養。
何か良い出来事があったときには、このことを、ぜひ思い出していただけたらと思います。