Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

2019-01-01から1年間の記事一覧

年末年始と家族:「帰りたくない」も大切な気持ち

本日が仕事納めで、帰省の準備をする人も多いかもしれません。 年末年始、家族と過ごすのがつらい。 そんな気持ちを抱えて、いたたまれない気持ちでいるなら、この記事を読んでいる間だけでも、心の中に、その本音を置いておくスペースを作ってあげてくださ…

クライエントの自己紹介を聴くこと:HSP、AC、愛着障害、毒親育ちという「肩書き」

カウンセリングで自分のことを話すのは、とても難しいことだ。 誰かにちて話すことは、日常でたくさんやっていても、自分について話すことは、カウンセラーだって慣れていない。 そこで、クライエントさんたちは、ある「肩書き」を使う。 HSP、AC(アダルト…

カウンセリングを受けると決めた人の勇気。

クライエントさんは「勇気のある方だ」と私はよく思う。 理由はたくさんあるが、その一つを先日ツイートした。 親、そのまた親から受け継がれてきた負の遺産を、自分の代で断ち切ると決めた人が、カウンセリングに現れる。素晴らしい勇気と賢明さだと思う一…

怒りよりも悲しみよりも厄介な感情:恥という呪い

人を痛めつける感情の一つに、恥がある。 いじめや性被害、パワハラに遭った人たちの多くが、この感情に苦しめられている。 自分のことが「恥ずかしい」と思うとき、人は小さくなり、背中を丸め、顔を隠して、自分の存在を消してしまいたいと願う。 ユングが…

心のお守りとしてのカウンセラー:関係性を提供する

カウンセラーとして、クライエントに提供しているものって何だろう。 専門知識、スキル、時間や場所といった物理的空間。 そういうものももちろんあるけれど、“関係”というのもあると思う。 1回1時間のセッションだけが、カウンセラーが提供しているものでは…

感情に対する恐れを克服する:カウンセラーとして成長するということ

クライエントの感情に触れるのが怖いというカウンセラーもたくさんいる。「そんなことをしたら、クライエントが壊れてしまう」と、自分の恐怖心をクライエントの自我の脆弱性にうまくすり替えたり。本当に感情に触れられていないのは、どちらなのか。自分に…

カウンセリングで感情を扱うということ:カウンセラーの涙

カウンセリングの最中にクライエントさんと一緒に泣いてしまうこと、私は結構あります。 クライエントさんは、自分も泣いているにもかかわらず、カウンセラーの涙を見て、ハッとするようです。 自分の中の痛みや苦しみが、「本当に痛くて苦しいこと」なのか…

恥(shame)による自己否定感に苦しむ人へのサポート

恥(shame)や自己否定感が強い人には、代わりに怒って、肯定する。 こうしたかかわりがとても大切だと思う出来事がありました。 私の友人が職場でパワハラを受けていたときのことです。 事あるごとに、「お前の代わりなんかいくらでもいる」と言われ、彼女…

映画「ジョーカー」と永山則夫死刑囚について

話題の映画「ジョーカー」を観ました。 バットマンの悪役の誕生秘話という点について語れるほど、詳しくはないので、ジョーカーが体現する恥(shame)の問題と、日本のリアル・ジョーカーとも言える永山則夫死刑囚のことを書きたいと思います。 『ジョーカー…

私のカウンセリング体験

カウンセラーもカウンセリングを受けます。 今回お話しするのは、私のカウンセリング体験です。 私は親のスパルタ教育(もはや死語?)の影響で、なかなか自分に自信を持つことができないタイプでした。 テストでは100点を取るのが当たり前。90点台でもがっ…

「愛してる」よりも大切な言葉。

この映画を観たのは今年の春だった。 ティモシー・シャラメ&スティーヴ・カレルが唯一無二の親子愛をつづる/映画『ビューティフル・ボーイ』予告編 「すべてをこえて愛してる」 映画を観た後、このキャッチコピーがなんだか苦しかった。 息子に必要だった…

“カウンセラー”が感情から逃げないこと。

クライエントにつらい気持ちを体験させることに躊躇してしまう。 感情や体験に焦点を当てる心理療法を勉強していると、よくこんな声を耳にします。 でも、それは、カウンセラー自身も感情の扱いに不慣れなだけです。 つまり、カウンセラーの中の恐怖心がプロ…

カウンセリングですること:感情の声を聴く

「クライエントが涙を流し始めると、慰めたくなってしまう」 という言葉を聞いて、そうなのか、と思うとともに、自分が見ているものは少し違うんだな、と思ったことがあったので、記事にまとめておきたくなりました。 感情や体験に注目するアプローチを取る…

カウンセリングの話:ポジティブ感情と日本人

海外のカウンセリングのデモンストレーション・ビデオでは、クライエントがポジティブ感情にただただしっかりと浸り、生き生きと変化していく様子を見ることがある。 そのプロセスはとても感動的で、強く心を動かされる。 「日本でも、こんなカウンセリング…

怒りを溜め込まない方法:ポートレイアルというカウンセリングの手法

怒りは嫌われがちな感情だ。 カウンセリングのセッションでも、クライエントの体験が深まりにくくなるのは、彼らが自分の中の怒りに気づいたときだったりする。 「今ここで怒ったりしたら、カウンセラーからどう思われるだろう」 「怒るなんてみっともない」…

あなたも『美女と野獣』のベルになれる:自分の感情と向き合ったら、何が起こるのか

『おやゆび姫』然り、『美女と野獣』然り。 自分とは違う醜い生き物が、素敵な王子様に変わる。 おとぎ話によくある筋書きです。 感情や体験に注目したカウンセリングをしていると、この“醜い王子様”たちは、自分自身の中にある、見たくも触れたくもない“醜…

感情の役割と機能:例えば、悲しみについて

「感情なんてなくなってしまえばいいと思っていたけど、どんな感情にも意味があるんだとわかってよかった」 感情の機能と役割について、授業で話すと、学生がよくこんなコメントをくれます。 進化の歴史とは、退化の歴史でもあり、生存に不要なものは容赦な…

フォーカシング的態度とresponsibility

「子どもの頃、親に自分の感情をしっかりと受け止めてもらえなかった。 それはあなたの責任ではない。 でも、それによって今も生きづらさを抱えているとしたら、 それを変化させる責任は、あなた自身にある。」 感情に注目した心理療法の本を読んでいると、…

日常のコミュニケーションと心理療法の技法

先日、とある用事で、データ印刷のお店に行った。 対応してくれた店員さんと、用紙のタイプや加工について相談していたとき、私の背後にある自動ドアから、別のお客さんが入ってきた。 その人は入ってくるなり、店員さんに「○○ってできます?」とだけ聞いた…

FAQ:カウンセラー初学者の場合 ①

カウンセリングを「学んで、実践する」立場から、「学んで、実践し、教える」立場になって、数年が経った。 カウンセラーやセラピストを志す心理臨床家の卵たちと、授業やスーパーヴィジョンで接していると、「見立てを伝え」たり、「病理や問題の成り立ちを…

自分自身でいる、ということの輝き:映画「ある少年の告白」

GWは、映画をたくさんみました。 自分自身でいるということは、決して簡単なことではない。 でも、自分自身でいることは、尊くて美しい。 そんなメッセージが込められた映画は、いくつかありますが、この作品もその一つだと思いました。 映画『ある少年の告…

顔は感情の舞台:その美しさと儚さと力強さ。

心理学者のP. Ekmanは、「顔は感情の舞台である」と言った。 カウンセリングでも、感情と切り離された言葉の代わりに、真の感情を伝えてくれるのは、顔である。 眼差し。噛み締められる顎。引き結ばれる唇。寄せられる眉根。こぼれ落ちる涙。ため息。 クライ…

「感受性が強くていいことってありますか?」という質問から考えたこと。

カウンセリングをしていると、クライエントからいろんな質問を投げかけられる。 「感受性が強くていいことってありますか?」 最近、複数のクライエントから立て続けにこう尋ねられた。 肩を小さくすぼめながら、苦笑しながら、また時には涙ながらに発せられ…

相手の魅力を見つけるのも、カウンセラーの仕事。

カウンセラーの仕事、あるいはカウンセリングと聞くと、人の悩みに寄り添う、話を聞くことで楽になってもらう・気づきを促進する、あるいは、精神疾患を抱える人の治療をするといったイメージが強いかもしれません。 でも、カウンセラーとして、実際にやって…

心理職養成の大学院教育あれこれ:SVシステムについて

自分が若手ではなく、もはや中堅と呼ばれる立場であることを、学会で顔なじみの先生方からつっこまれ、「中堅」などというぶかぶかの上着に袖を通してみたのは昨年のこと。心理臨床の世界では、いわゆる「若手」や「初学者」は臨床経験5年目くらいの臨床家を…

若手時代に受けたSV(スーパーヴィジョン)と、臨床家として生き残ることについて。

臨床心理学専攻の修士2年だった頃。 あるゼミが年に1回主催する合宿形式の事例検討会で、事例を出してみないかと先輩から声をかけられた。 スーパーヴァイザーは、九州在住の著名な精神科医、K先生で、この年1回の事例検討会は、その先生の名前をとってKカン…