思考には思考の文脈があり、感情には感情の文脈がある。
この2つの調和が取れなくなったとき、人は、「自分には今、カウンセリングが必要だ」と感じるのかもしれません。
私たちは、子どもの頃から「考える」トレーニングはたくさん受けてきますが、「感じる」ことはさほど重視されません。
どれだけ繊細に自分の感情を感じ取れるかという事柄は、テストでどれだけ良い点が取れるかに比べると、取るに足らないことにされてしまうのです。
しかし、最初に述べたように、思考の文脈と感情の文脈はまったく別のものであり、心の健康とは、この2つの文脈をバランスよく編み上げることができる力なのだと思います。
思考が、感情をねじ伏せているような状態では、私たちは身体の調子を崩しやすくなり、心は厚い雲に覆われたようにどんよりとします。
反対に、感情が思考を乗っ取ってしまうような状態では、私たちは対人関係や行動面の問題を抱えることになります。
安心と安全が感じられる環境で育ってきた人は、感情を感じつつ、それについて考えることができますが、安心や安全が乏しい環境の中で何とか生き延びてきた人は、感情を感じる力か、感情について考える力のいずれか、またはその両方を犠牲にしてしまっていることが多いのです。
思考が感情をねじ伏せてしまっているようなときには、感情の文脈がもっと生き生きとしてくるような働きかけが必要です。例えば、話をするよりも、黙って自分の身体の感覚にじっくりと注意を向けてみることが役に立つでしょう。
感情が思考を乗っ取ってしまっているようなときには、深呼吸やグラウンディングのような感情調整の方法を学ぶことも役に立ちます。
思考と感情が手を取り合えるようになると、あなたの人生をより良い方向へ導いてくれます。
これまで感情に乗っ取られていた思考が、きちんと機能し始めるとき。
これまで思考にねじ伏せられていた感情が、生き生きと息づいているのを感じるとき。
私たちは、自分が変わったと実感できるのだと思います。