カウンセリングの冒頭、あるいは途中に、クライエントさんがぽろっとこんなことを話してくれることがあります。
「今日はなんだか疲れていて」
または、初めてお会いするクライエントさんがソファに座った姿を見て、カウンセラーのほうが気づくこともあるかもしれません。
「ちょっと緊張していますか?」
いずれも、クライエントさんの話の内容ではなく、身体のコンディションに注目しています。
カウンセリングは「話をする場」だと、私たちは思っているものですが、そこには「身体が話したいこともある」と思ってみてみると、その日のカウンセリングの展開が少し変わってきます。
「その疲れに、ちょっとスペースをあげてみませんか?」
「疲れを感じていることを、ご自分に許してみてあげるのはどうでしょうか?」
「その緊張は、今、身体のどのあたりに感じますか?」
こんなふうにして、身体が感じている疲れや緊張にも、ようこそ、という思いで声をかけてみます。
これだけで少し緊張が緩む様子が見られたり、疲れていたと話していたクライエントさんの表情がホッと和らぐことがあり、こうした瞬間を目にすると、私の身体もふわりと力が抜けて楽になってきます。
考えてみれば、疲れや緊張という身体の状態は、怒りや悲しみなどの感情と同じくらい、普段の生活の中で傍に追いやられがちなものかもしれません。
「疲れているなんて言っちゃダメ」
「緊張するなんてカッコ悪い」
そんなふうにして、押し込めてしまったり、心の中でバツ印をつけてしまっている身体のコンディションにも、ただ優しく気づいてあげる。
そして、その疲れや緊張の隣にそっと座るようなイメージで寄り添っていると、背中を椅子の背もたれに委ねることだったり、深く深呼吸をすることだったり、そのとき身体が必要としている動きが生まれてきます。
これもすごく大事な身体との対話、自分との対話です。
カウンセリングですることは、こうした自分との小さな対話の積み重ねだと思うのです。