食べ物を慌てて飲み込まずに、よく味わって食べると、匂いや味、舌触り、歯ごたえがよくわかって、大きく深呼吸したときのような心地よさが広がり、食べ物のありがたみが感じられます。
感情も同じように、ゆっくり時間をかけて味わってみると、心の栄養になっていく。
そんなことを思ったエピソードを、今日は書いてみたいと思います。
先日、あるクライエントさんから、とても大きな感謝の気持ちを伝えてもらえる機会がありました。
そのとき、私は、その感謝の気持ちをゆっくり時間をかけて味わいたいと思うと同時に、今まで、私はクライエントさんたちから伝えてもらった感謝の気持ちを、十分に時間をかけて味わえないこともあったかもしれないと気づき、とても申し訳ない気持ちになりました。
これまでも、クライエントさんからいただいた感謝は、とても一口では飲み込めないほどたくさんでしたが、私はそれを急いで飲み込んで、何か反応を返さなくてはいけないと思っていました。
確かに、すぐに何か言葉を伝えられることは大切かもしれません。
しかし、クライエントさんにとっては、私がたくさんの感謝を目の当たりにして、胸がいっぱいになり、すぐに反応できなくなる姿をみるのも、とても大切なことのように思います。
多くのクライエントさんは、「自分が誰かに影響を与えられる人間だとは思っていなかった」とおっしゃいます。
なので、カウンセラーが目の前で一緒に涙を流したり、腹を立てたりして、自分の話を聞いて相手の心が、こんなふうに動くのだと目の当たりにすることが、
「自分の言葉も、誰かに届くのかもしれない」
という希望につながるのです。
先日クライエントさんからいただいた感謝は、本当にゆっくりと、じわじわと私の身体に広がっていき、じーんとしたあたたかさとして感じられました。
ものを食べているときに話すことができないように、感情を身体で感じているときも、言葉が出てこないものですね。
この体験を振り返りながら、ふと浮かんだのが、冒頭に書いた「心の栄養」という言葉です。
滋養というほうが、ぴったりかもしれません。
これまでのセッションでも、私は本当に大切なものを受け取っていたんだな、もっと時間をかけて味わわないといけなかった。
そんな気持ちになりました。
そして、クライエントさんにも改めて、さまざまな感情をゆっくり時間をかけて味わっていただくことを大切にしたいと思いました。
クライエントさんとの間で起こる体験は、言葉にしなくてもちゃんと相手に伝わっている。
だから、クライエントさんが勇気を持って伝えてくれる感謝は、こうしてゆっくり、しっかり味わっていこう。
今日のブログは、自分のための備忘録でもあります。
折に触れて、またこの感覚に戻ってきたいと思います。