ここ数年、大切な人の誕生日には、前もってプレゼントを用意するのではなく、その人のほしいものを一緒に買いに行くようにしています。
例えば、靴とかバッグとか、ざっくりしたものを決めておいて、相手が試着したりお店の人と相談しながら吟味する様子を見ています。
そうしていると、わかることがあります。
「これ!」というものに出会うと、相手がにっこり笑うのです。
目尻にカラスの足跡のようなシワができるのが、そのサインです。
「まあ、これかな〜」と思っているときの顔と、「これ!」と思ったときの顔は全然違います。
「これ!」と思うものを見つけてもらって、それをプレゼントできるのがとてもうれしいのです。
これは、カウンセリングの中で起こることに似ています。
例えば、クライエントさんが自分の体験にぴったりと合う言葉を探しているとき。
自分が本当に感じたかったのは、どんな感情なんだろうと胸に手を当てているとき。
「まあ、こんな感じかな」と思っているときの表情と、「そうそう、これこれ!」と思ったときのクライエントさんの表情は、全然違います。
そして後者のときのほうが、クライエントさんも私も、ずっと満たされた気持ちになるのです。
カウンセリングを始めたばかりの頃には、私が「これかな?」と思うものを、いくつかクライエントさんの前に並べてみることもあります。
そうやって、体験を表す言葉や感情のレパートリーがいろいろあるのだと知ってもらう段階も、もちろん必要です。
ほしいものを探すときに、いろいろと品物を見せてもらうのと同じです。
でも、そうしているうちに、だんだんと、クライエントさんの中で「これ」と思うものが、おぼろげに見えてきたり、不意に立ち上がってきたり、パッとわかることがあるのです。
「それ」を大切にしてほしいな、と思いますし、「それ」を見つけるお手伝いができるのも、カウンセリングの醍醐味のひとつです。