「自分の感情に注意を向けてみましょう」
「感情をしっかり感じてみましょう」
と、カウンセリングの中で提案すると、クライエントさんから、
「でも、そんなことをしたら、感情のコントロールが効かなくなってしまうのではないですか?」
という心配の声が聞かれることがあります。
これはクライエントさんに限ったことではありません。
多くの人が、「感情を感じる」=「感情的になる」というふうに、感情に対して極端な誤解をしています。
感情は、まるで時限爆弾のようなイメージを持たれていて、触れたらすぐに爆発すると感じている人は少なくないようです。
そんなとき、私は「感情的になること」と「感情があること」は違うという説明をします。
感情が湧き起こってきたとき、自分でそれに気づいて、「今、悲しくなっているね」「腹が立っているね」「今の言葉に傷ついたね」と、目をとめてあげると、それだけで感情はちょっと落ち着きます。
その感情を抱えておけるスペース(感情の居場所)が、自分の中にできるからです。
これが「感情がある(感情を感じている)」という状態です。
怒り狂うとか、暴言を吐くとか、泣きわめくといった、いわゆる「感情的になる」状態とは全然違いますよね。
感情的になってしまう理由はいろいろあります。
自分が自分の感情を否定しているとか、手当されていない痛みや傷つきに触れてしまって、そのときの孤独感が押し寄せているとか、ある感情を隠すための感情が出てきているなど、一言ではなかなか書き切れませんが、少なくとも何らかの理由で「見てほしいというサインを発している感情」を見てあげられていないことが、「感情的になる」原因です。
このような状態は絡まった糸のように厄介で、本人にとってはどこに解決の糸口があるのか、なかなかわからないものです。
感情に焦点を当てるカウンセリングでは、この絡まった糸を解きほぐす作業を、カウンセラーと一緒にやっていきます。
そうすると、クライエントさんは自分の中の「見てほしい」と訴えていた感情に触れられるようになり、自然と「感情があること」と「感情的になること」の区別がついていくようになります。