Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

つらい感情は、カウンセラーと一緒に感じる。

カウンセリングを受けるという営みは、チャレンジの連続だとつくづく思います。

例えば、今まで誰の助けも借りずにやってきた人にとって、専門家とは言え、赤の他人に自分の抱えている悩みや葛藤を打ち明け、「クライエントになる」ということが、まず最初の大きなチャレンジです。

そして、「クライエントになる」というチャレンジをした後にも、「自分の痛みや傷つきに向き合う」、「愛情をくれなかった人、でも愛してほしかった人に対して怒りを向ける」、「愛してもらえなかった悲しみを感じ切る」という数々のチャレンジが待ち受けているのです。

胸が潰れるほどの悲しみを感じ切る体験は、もはや試練といってもいいほどです。

そのため、私は「カウンセリングを受けるのは、心が弱い人」という言葉に、強烈な違和感と憤りを覚えます。

カウンセリングを受けるのは、「自分の人生を生きること、自分の人生を取り戻すことを諦めていない人」だと思うのです。

クライエントとして、カウンセリングの門を叩くこと。

今まで蓋をしてきた、つらい感情、つらい関係、つらい出来事と向き合うこと。

叶わなかった願いを口にすること。

愛してほしかった相手が、変わることなどないのだという悲しい現実を認めること。

今まで費やしてきた時間を嘆くこと。

愛してほしくて自分が頑張ってきたことを、一つひとつ、カウンセラーと一緒に認めていくこと。

親から与えられたいと願っていた、いたわりやケアや、優しさを自分で自分に向けていくこと。

それができる自分の真の強さを感じ、誇りに思うこと。

どのプロセスにも、胸を締め付けられるようなやるせなさがあります。

クライエントさんの代わりに、私がため息をこぼすこともたくさんあります。

かつて歯を食いしばって堪えた涙や、拳を握りしめて堪えた怒りを、今ここで一緒に感じ直していくような作業です。

ただ、そんな過酷なプロセスの中でも、クライエントさんに感じていてほしいのは、「それを一人でやるのではない」ということです。

つらい過去のことなど思い出したくもない。もう乗り越えたと思っていたのに。

そんなふうに感じるのは当然です。

でも、そう感じているとき、頭の中にどんなイメージが浮かんでいるか、ちょっと意識してみてください。

イメージの中のあなたは、一人ぼっちでいるのではないでしょうか。

今度(カウンセリングで)は、違うイメージを持っていただきたいのです。

カウンセラーが、あなたと一緒にいるというイメージです。

つらい感情に向き合うときには、その感情を一緒に受け止め、その感情のニーズを聞き届け、ともに調整してくれる相棒が必要です。

「一人でやらなくていいのです。一緒にやりましょう」

これは、心の中で常々思いながら、そして時にはっきりと言葉に出すことで、クライエントさんに伝えたいと思っていることの一つです。