カウンセリングをしていて、心が躍る瞬間、感動で肌が泡立つ瞬間があります。
それは、クライエントさんが「新しい自分に出会った」と感じてくださる瞬間です。
今までずっと、相手に思ったことをはっきり伝えられなかった。
今までずっと、他人は信用できないと思っていた。
今までずっと、怒りは苦しいだけで何も生まない感情だと思っていた。
それでも、カウンセラーに対して自分の思いをはっきりと伝えている自分に出会う瞬間があります。
カウンセラーの言葉は、疑うことなく自分の中に取り入れることができると感じる瞬間がやってきます。
怒りを感じ切った後に、澄んだ空を見上げるような清々しさを感じられる自分がいると、感じる瞬間が訪れます。
それは、もしかしたら「新しい自分」ではなく、「遠い昔に置いてきてしまった自分」なのかもしれません。
こういう新しさを感じるとき、ちょっと面白い現象が起こります。
「慣れなくて、変な感じです」
「まだちょっと落ち着かない」
人の心というものは、本当に繊細で、新しいことが起こるとそれに対する動揺が起こるのです。
私が学ぶ心理療法では、この感情にも「tremulous affect」という名前がついています。
(日本語では、揺動感情と訳されていますが、ちょっと難しいですね)
生まれたての鹿は、足を震わせながら立ち上がりますが、ああいう感覚が新しいことを体験した心にも起こるのです。
こういう瞬間には、お産に立ち合っているかのような肌が泡立つ感覚や、なんだかジーンとして胸がいっぱいになり、言葉が出ないような感覚をカウンセラーも体験します。
それからは、「新しい感覚ですね」という言葉が、クライエントさんとの間で合言葉になるような感じがします。
この新しい感覚が、自分の変化の指針なのだと感じていただけているようで、とてもうれしく思います。