Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

諦めは、現実をきちんと見る力でもある。

カウンセリングというのは、ある人がこれまでずっと諦められずにきた何かを、諦める瞬間に立ち会うものでもあります。

諦めるという言葉から、皆さんはどんな印象を受けるでしょうか。

一般に、諦めるという言葉はネガティブなイメージがつきまとうものかもしれません。

諦めを、敗北とみなす人もいるでしょう。

しかし、カウンセリングの中で起こる諦めは、「明らかにする、はっきりと見る、直視する、受け入れる」という感覚に近いもののように思われます。

これは心理学を学んだことにある人は、出会ったことのあるフレーズかもしれませんが、諦めには、明らむ(明らかにする)という意味もあります。

彼の気持ちは私に向いていなかった。

親から愛されたかったけど、相手は変わりそうにない。

何とか第一志望の大学に入りたかったけれど、力が及ばなかった。

こんな病気にはなりたくなかったけれど、自分の力ではどうしようもないことが立て続けに起こってしまって、精神的に参っても仕方のない状況だった。

諦められないのは、諦めたことに対して同情を寄せられたり、諦めたことによる惨めさを感じることが、恥を喚起するためでもあります。

恋愛や就活がうまくいかなくてかわいそう。

親から愛されないなんてかわいそう。

病気になるなんてかわいそう。

そんな周りの目に晒されるのは、とてもつらい体験です。

周りからの同情を跳ね返そうとして、人はなんとか理想のストーリーにしがみつき、現実との落差に打ちのめされます。

カウンセリングで起こる諦めは、その落差に自分を打ち付けるのをやめることです。

今まで一生懸命、理想を描いてきた腕は、力なく下へと落ちますが、不思議とクライエントさんたちの表情は晴れやかになります。

もう自分を痛めつけなくていい。

大切なのは、周りから同情されないようにすることではなく、自分で自分を大切にすることなのだとわかるからです。

悔しさや喪失感はもちろんゼロではないですが、現実をはっきりと見ることができる自分を感じると、その自分を誇らしく、勇敢だと感じられます。

 

諦めるというのは、敗北などではなく、むしろ自分自身や目の前の現実としっかりと向き合うことでもある。

きちんと諦めたからこそ、新しく生まれ、始められるものがある。

カウンセリングでは、諦めを決してネガティブなものとは捉えません。

ただ、そのプロセス自体は決して簡単なものではなく、たくさんのつらい感情が伴うものなので、一人ではなく専門家の力を借りることで、進めやすくなるものだと思っています。