Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

恥に対抗する感情:怒り・誇り・思いやり

有害な恥(toxic shame)とは、自分は無能で、無価値で、愛される資格がないと感じさせる感情で、さまざまな精神疾患の背景に、この感情が深く根づいていると考えられています。

それでは、私たちがこの有害な恥から守られたり、解き放たれたりするときに作用している感情には、どのようなものがあるのでしょうか。

怒り・誇り・思いやり。

この3つが恥への解毒剤として作用すると言われています。

 

例えば、映画『グレイテスト・ショーマン』の劇中歌、『This Is Me』は映画公開当時、多くの人々の心を打ちましたが、この曲の中にこんな歌詞があります。

When the sharpest words wanna cut me down 

言葉の刃で傷つけるなら

I'm gonna send a flood, gonna drown them out  

洪水を起こして溺れさせる

これは「怒り」によって、恥を跳ね返す方法です。

 

韓国ドラマ『梨泰院クラス』では、トランスジェンダーであることで好奇の目に晒されるヒョニに、セロイがこう言いました。

「お前はお前だ。他人を納得させようとしなくていい」

これは、立ち向かわず逃げても良いのだと伝え、思いやりで相手の心を守る方法です。

一方、イソはヒョニに『私はダイヤ』という詩を送ります。

これは、「私にはあなたの輝きが見える。あなたは美しい」と伝え、誇りによってヒョニの心を守ることにつながりました。

 

そして、『鬼滅の刃無限列車編』で、人間は愚かで、弱く、不完全だという上弦の鬼の言葉に、煉獄さんが決して屈しなかったのは、誇りがあったからでしょう。

「俺は、俺の責務を全うする。ここにいるものは誰も死なせない」

誇りがしっかりと心に根を張っていれば、有害な恥につけいられることはありません。

 

こうした場面で涙が出るのは、私たち一人ひとりの中に恥によって傷ついた経験があり、体の内部に残っている恥の毒が、怒りや誇り、思いやりの力で掻き消えていくからでしょう。

実際の人生でも、恥による傷つきを、怒りや誇り、思いやりで癒していくことが役に立ちます。

カウンセリングは、その作業をするための場所なのです。