カウンセリングをしていると、変化とは直線の上に起こるものではないのだなと、実感する瞬間がたくさんあります。
「こうなったから、次はきっとこうだ」
「こういう流れできたから、こうなるに違いない」
という予測は、案外邪魔になることすらあります。
子育てや人間関係にも同じことが言えるかもしれません。
むしろ化学変化や、桜の木の枝のそこここで開き始めた蕾が、次第に満開になっていくように、変化というのは、「ぽっぽっぽっ」と起こっていくもののようです。
私は、クライエントさんが「ちょっと、今の話とずれるかもしれないんですけど」と前置きしてから語られる内容を聴くのが好きです。
こうして断ってくれるクライエントさんの律儀さが好ましいのはもちろんですが、実はこの前置きの後に出てくる、”パッと現れた、ふっと思い出された事柄”の中に、本質や核心をついた体験が詰まっていることがあるからです。
語りにおいて、文脈や流れというものがあるのは確かですが、一方で、「語られていない体験の文脈や流れ」が同時並行的に、あるいは若干のタイムラグを伴って起こっていて、そちらの流れにも耳を傾けるのが、カウンセリングの時間だと思うのです。
クライエントさんは、カウンセラーへ向けて言葉を紡ぎながら、ご自身の中の体験の流れを感じています。
カウンセラーは語られている言葉だけでなく、クライエントさんの身体の中に流れている体験の流れを感じ取ろうと努めます。
それが、真の意味での傾聴だと思いますし、「クライエントさんを体験の中に一人ぼっちにしない」ことにもつながると思っています。
「今、パッと思い出したことがあって」
「先生と話しながら、思い出したんですけど」
「今話していることと、関係があるかわからないんですけど」
こんな前置きを聞くと、ワクワクして胸が高鳴るというのはまったくもって職業病としか言いようがないのですが(笑)、そんな”不意の訪問者”こそ、大切な手土産を持ってやってきてくれることが多い気がします。
カウンセリングは、カウンセラーと一緒に、心の中で起こっているいろんなことを表に出して、「ああかな、こうかな」と見ていく時間です。
その時間に、ふっと思い出された体験があれば、勇気を出してぜひ言葉にしてみてください。
思いかげず現れた扉のように、その体験を語ることで、新しい世界が見えてくるかもしれません。