Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

「よい感情」と「悪い感情」がある、という誤解。

感情の分類として、よく「ポジティブ感情/ネガティブ感情」という呼び名が使われますが、この呼び名が与える印象のせいか、感情に「よい感情」と「悪い感情」があると思っている方も多いかもしれません。

例えば、喜びはよい感情で、怒りは悪い感情だというふうに。

しかし、心理学的な観点から言うと、「ある感情は善で、ある感情は悪」という分類があるわけではないのです。

ある人にとっての感情の「良し悪し」は、「その感情を感じたり表したりすることで、大切な人との関係が切れてしまうかどうか」で決まります。

感情に対するジャッジ(良い・悪いの決めつけ)の基準は、とても主観的な体験が元になっているのです。

例えば、自分が怒ると親がいつも嫌がり、取り合ってくれなかったという体験があると、その人の中では「怒りはよくない感情だ」ということになりますし、喜んだ姿を見せると「調子に乗っている」と親からいつも嫌悪や軽蔑の感情を向けられた人にとって、「喜びはよくない感情だ」ということになります。

でも、すべての感情には健康的な機能と役割があります。

怒りは、理不尽な攻撃や搾取、侵害に対して境界線を引くために必要な感情ですし、喜びは、うれしいと感じる行為を何度も繰り返すことで、心が踊るような気持ちや自信、感動といった体験的なリソースを自分の中に取り込むという役割をしています。

感情の健康的な働きを取り戻すことで、感情は決して危険なもの・役に立たないものではなく、自分の人生をより良い方向に導いてくれる、心強い味方だということがわかってきます。

そのためには、安心で安全な関係の中で、「よくないもの」というレッテルを貼った感情に触れて、その感情の声に耳を傾けてみることが大切です。

そして、そのレッテルを貼らざるを得なかった背景を理解し、その感情にまつわる物語をこれまでとは違った視点から、編み直す必要があります。

Netflixの『13の理由』という作品では、ある出来事に対する13人の登場人物から見た「13の物語」が交錯するのが面白い点ですが、あなたの感情にまつわる物語も、違った視点から見ることで、ただ悲しく惨めな物語が、勇敢でひたむきな物語に変わるのです。

カウンセリングは、新しい物語が生まれる場所でもあり、この仕事の面白さややりがいを感じさせてもらえる瞬間です。