「嫌だ」と言って、褒められたことのある人はどれくらいいるでしょうか。
「嫌だ」と言うと、たいてい「わがまま」とか「我慢が足りない」と叱られてしまいがちです。
しかし、自分にとって何が嫌で、何が嫌ではないのかがわかるというのは、本来とても大事なことです。
「嫌だ」という気持ちの元になる感情は、嫌悪です。
嫌悪は、人間が持つ基本感情の一つで、私たちに生まれながらに備わっています。
基本感情はすべて、私たちの命や健康を守るために何かしらの働きをしますが、嫌悪には毒や腐った食べ物など、有害なものを身体に入れないという役割があります。
対人関係の中では、踏み越えてほしくないラインを踏み越えてきた相手に対して、嫌悪感を抱くこともあるでしょう。
嫌悪というのは、怒りと同じくかわいそうな感情で、「嫌だと言う=悪いこと、よくないこと」というレッテルを貼られて、感じることも表すことも、問答無用にNGとされてしまいがちです。
自分の中の「嫌だ」という気持ちに気づいたら、それをすぐに打ち消そうとするのではなくて、「自分にとって有害なこと、よくないことが起ころうとしていると教えてくれているのかもしれない」と、ちょっと立ち止まってみるのもいいかもしれません。
生理的な違和感に置き換えてみるとわかりやすいのですが、食べ物を一口食べて、何か腐ったような匂いや味がしたときには、私たちはすぐにそれを吐き出します。
これも、嫌悪がきちんと働いてくれている証拠です。
「いやいや、賞味期限はまだのはずだし」などと、身体の声を無視して食べ続けてしまうと、あとあとお腹を下したり、吐き気を催したりすることになります。
しかし、対人関係の中では、嫌悪のサインを聴くことは、食べ物の場合ほど簡単ではありません。
関係がこじれたり、トラブルが起きてしまった後で、「そういえば、なんだか嫌な感じがしたんだよなぁ」と振り返ってわかることがほとんどです。
「嫌だ」という感覚は、決してわがままやよくないことではなく、自分にとって有害なものである可能性を示してくれるもの。
今日からはそんなふうに思って、嫌悪の声を聞いて立ち止まる練習をしてみるのもいいかもしれません。