Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

カウンセリングですること:感情を「要素分解」する。

2月、3月と久しぶりに研修の講師をさせていただく機会があり、ここのところ、どんな内容にしようかと、構想を少しずつ練り始めています。

そこでお話ししてみたいなと思っていることの一つは、「感情の要素分解」についてです。

ここに書いてしまっては、貴重なネタが一つなくなってしまうかもしれないのですが(笑)、研修に来られない方にも届けられたらと思いますし、自分の頭の整理のためにも言語化してみたいと思います。

日本語には、気持ちや感情を表すさまざまな言葉があります。

怒り、悲しみ、喜び、嫌悪、恐怖といった心理学で言う基本感情の他にも、寂しさ、悔しさ、ゆううつ、罪悪感、嫉妬、虚しさ、ワクワク、ドキドキ、ムカムカ、自己嫌悪など、挙げればきりがありません。

それだけ、私たちの心には、感情のニュアンスを繊細に感じ取る襞(ひだ)が育っているということでもあります。

ただ、カウンセリングをするときには、あえて感情を複雑なままにせずに、シンプルな要素により分けていく必要もあると感じます。

例えば、嫉妬は多くの場合、怒りと悲しみに分解できます。

小さな子どもが、年下のきょうだいに向ける嫉妬は、自分より多くの愛情をきょうだいのほうに向けている(ように見える)親への怒りと、”親からの愛情を一身に受けていた自分”を失った悲しみに分解できます。

また、自分より能力面や経済面で恵まれている人への嫉妬は、それを持ち得なかった悲しみと、その悲しみを自分からも他者からも隠すための防衛的な怒りに分解できるでしょう。

つまり、カウンセリングの中では、嫉妬という感情をそのまま扱うのではなく、怒りと悲しみに要素分解して、それぞれの感情を扱っていくのです。

感情を要素分解してみることは、カウンセラーの立場にある方だけではなく、カウンセリングを受けに来られる方々にも、役に立つように思います。

なぜなら、嫉妬のように2つ以上の感情が組み合わさって感じられる感情は、体験するには大きすぎたり、向き合おうとするにはややこしかったりするせいで手に負えなくなって、

「嫉妬しているなんて情けない」

「こんな気持ちを持っていてはいけない」

と、フタをしてしまいがちだからです。

(こうなると、嫉妬の感情があることに対する恥や罪悪感が出てきて、自己嫌悪感になり、ますますややこしいことになってしまいます!

少し脱線しますが、ものすごく大雑把な言い方をすると、カウンセリングですることが、

嫉妬ー怒り=悲しみ

嫉妬ー悲しみ=怒り

というふうに、心の中の体験をシンプルにしていく作業であるのに対し、普段私たちがやりがちなのが、

悲しみ+怒り=嫉妬+恥+罪悪感=自己嫌悪感

というふうに、体験をどんどん複雑にしていくことなのです。)

フタをされた感情がなくなることはありません。しばらくの間は忘れられたような気がしても、折に触れ、繰り返し繰り返し出てきては、その人を苦しめることになります。

嫉妬を構成する怒りと悲しみが、それぞれにプロセスされない(感じ切れない)ままだからです。

もし、扱いに困る感情があったら、「この感情は、何と何からできているんだろう?」と思い直して、そのニュアンスを感じ取ってみることをオススメします。

もちろん一人では難しい場合もありますので、その場合は、専門家の助けを借りてみてください。きっと、あなたの力になってくれるはずです。