怒ったり、イライラしたり、ムッとしたり。
悲しくなったり、寂しくなったり、切なくなったり。
楽しくて、ウキウキしたり、ワクワクしたり。
怖くなったら、ビクビクしたり、おどおどする。
気持ち悪さでムカムカしたり。
基本感情の5つだけでも、感情のニュアンスは細やかに分けられるし、その些細な違いを、私たちはたくさんの語彙で表し分けています。
これがまさに、エモーショナル・マインドフルネス。
難しい横文字を使わなくても、こういう現象は、私たちが日々、自然にやっていること。
でも、これができなくなると、途端に心のバランスが崩れてしまう。
自分の感情を感じて、それをぴったりな言葉で表せること。
これは思っているほど簡単ではなくて、思っているほどありふれたものでもないのかもしれません。
怒りや嫌悪感は、大切な相手に向けると、関係にヒビが入ってしまうこともあるため、表すことも感じることもしないで、意識の外に追い出されてしまうことの多い感情です。
悲しみや恐怖は、「悲しみ=弱さ」「怖がる=臆病」などとみなされがちで、「弱い自分」「臆病な自分」を受け入れることが難しいことから、これも人によっては意識の外へと追い出されます。
また、ワクワクすると叱られたり、喜ぶと嫌味を言われたりするといった体験を重ねてきた人は、喜びや楽しさを感じることを、自分になかなか許してあげられません。
このようにどんな感情も、体験されず、意識の外へと追い出されてしまう可能性をはらんでいます。
でも、こうした意識の外に追い出されている感情をしっかり体験すること、つまり、エモーショナル・マインドフルな状態であることは、その人らしさやその人の魅力、能力を引き出すために欠かせないものです。
そのためのコツは、多くの書籍に書かれていてもう耳タコかもしれませんが、やはり「受け入れられること/受け入れること」なのだと思います。
大切な相手が受け入れてくれること。
自分が、自分の弱い部分を受け入れること。
大切な相手に心を開いて正直になることも、自分の不完全な部分を素直に認めることも、普段いる安全な場所から出るような、無防備になる感覚を伴います。
でも、それを乗り越えた先に、いつの間にか意識の外に追い出してしまっていた感情との再会があり、そうして切り離していた自分の一部が自分の中に帰ってくることで、エネルギーや自信、「このままの自分でいいのだ」という自己肯定感を取り戻すことができます。
そうしたプロセスがよく出ているのが、こちらの動画です。
「性転換手術を前にして」LGBTカップルの本音トーク。| The And | VOGUE JAPAN
FtMの男性が、恋人に性転換手術の失敗の不安や、それによって彼女が離れていくのではないかという恐れを打ち明けます。
彼女は、有能で自信満々の彼が見せた弱さを受け止め、手術の結果がどうであろうと「一緒にいたい」とはっきり伝えます。
これは、彼にとって「不安になる自分、失敗を恐れる自分」という隠してきた弱さを受け入れてもらう体験でした。
この不安を打ち明ける前の彼の笑顔と、その後の笑顔を見比べてみてほしいのです。
後の笑顔の方がずっと、自信に満ち、男らしく見えるから不思議です。
向き合うことを避けてきた感情に対してマインドフルになり、自分を開いたからこその魅力的な笑顔なのだと思います。
身体を小さくして、おずおずと怖さを打ち明ける姿からも、正直さや勇気を感じます。
人間の魅力って、こういうところにあるのではないかなと思うのです。