Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

境界線って大切:「許可を取る」という選択肢

カウンセリングを仕事にしていると、「自分の相手の間には境界がある・別々である」という感覚は、とても大切です。

子どもの下着の色まで決める校則に、嫌悪感を抱く人たちも多くなっているようですが、これって本当に大切な感覚で、私たちの中のソフトウェアが確実にアップデートされているのを感じます。

今までは、当たり前だったことが、当たり前ではなくなる。

そんな大きな変化の渦の中に、私たちは今、いるのかもしれません。

校則がそんなふうなので、私たちは、「身体は自分のもので、プライベートなもの」という感覚を持ちづらいのではないかと思います。

ある番組で、医師が子どもの患者に対して、「(身体に)触ってもいい?」と尋ねるシーンを見て、ハッとしたことがありました。

頷いた子どもに、医師はこう言いました。「許可を取りたかったの。あなたの身体だからね」

こう言ってもらえるだけで、私たちの「身体」や「境界線があること」という意識は、ずいぶん違ってくるように思います。

一方、「人の視界を遮ること」には気を遣う人が多いように思います。

美術館などでも、作品を鑑賞する人の前を、少し屈んで通る人の姿をよく見ることがあるのではないでしょうか。

視線って目に見えるわけではないのに、それを尊重しようとするって、改めて考えるとすごいことですよね。

身体には、明確な境界線があるのに、視界という明確な境界線のないものに、より神経を遣うというのは、不思議な現象だなと感じます。

「立ち入りすぎていないかな」「踏み込みすぎていないかな」と、目の前の人の視線を遮るときと同じような繊細さを、他の人の身体や考え方、人生の選択にも発揮していけると、不用意に相手を傷つけることが少なくてすむかもしれません。

許可を取るというのは、カウンセリングの中でも大切にしていることです。

クライエントさんが、心の中にいる子どもの頃の自分について話してくれることがあります。クライエントさん自身も、その子に対してどう接したらいいかわからないとき、

「ちょっと私(カウンセラー)から、その子に声をかけてみてもいいですか」

と許可を取るのです。

この方法を知ったとき、すごく素敵だなと思いました。

こういうことをするカウンセラーは、クライエントさんの体験と自分の体験をしっかり分けることができていて、相手の体験を尊重しようという気持ちがあって、クライエントさんに「あなたは尊重されるべき人なのですよ」と、も明確に伝えようという意図を持っていると感じたからです。

相手の体験に触れることも、身体に触れるときと同じ感覚でいられるといいなと思います。

「触れてもいいですか」

「声をかけてもいいですか」

「そこに一緒にいさせてもらえますか」

近寄ることを怖がるのではなく、許可の取り方を学ぶこと。

慣れないうちは、まだまだ練習が必要かもしれません。

だけど、すごく身につけておきたい、大切なことだと思います。