私のカウンセリングではよく、クライエントさんにこんな質問をします。
「今、どんな気持ちになっていますか」
「その怒りは身体のどこに感じますか」
すうっとその瞬間の気持ちや身体の感じに入っていかれる方もいれば、日本人のクライエントさんは律儀で、私のこうした問いに答えようとして、一生懸命“説明”しようとしてくださる方もおられます。
また、私の問いに“正しい答え”があるのではないかと想定して、不安が高まってしまったり、「わかりません」と答えを濁される方もいます。
カウンセリングは、“話をする場所”というイメージが強くて、“自分の感情や身体の感覚への気づきを高める練習のための場所”というふうには、最初はほとんどの方が思っていないので、こうした質問に戸惑ったり、不安を感じるのは自然なことです。
「今、どんな気持ちになっていますか」
「その怒りは、身体のどこで感じますか」
「今、流れた涙に言葉があるとしたら、何て言っているのでしょうか」
こうした質問には、急いで答えようとしなくて大丈夫です。
カウンセラーは待つ訓練もしているので、まずはゆっくり、ご自身の心や身体の中で起こっている感情や感覚を“感じて”ください。
感情や感覚にとって、感じてもらえることは、私たちにとっての“みてもらえる”ことや、“気づいてもらえる”ことと同じです。
不安や恐怖は、“みてあげる”、“気づいてあげる”と和らぎますし、怒りや悲しみといった大切な感情は、“みてあげて”“気づいてあげる”と、自然と流れ出し、流れのままにさせておくと数秒から数分でおさまっていきます。
考える前に、言葉にする前に、説明する前に、どうかまず感じてあげてください。
感情が込み上げているときって、内側でいろんな動きがあって、言葉が出ないですよね。
それでいいのです。
感じている時間、感じている体験そのものにとても大きな意義があります。
これは、自分の感情や感覚に対するマインドフルな態度を養うことでもあります。
ただ、自分一人では抱えきれないような大きな悲しみ、強い不安、強烈な怒りが出てきたときには、カウンセラーが、その感情の調節をお手伝いします。
話を聴くこともカウンセラーの仕事であり、すごく大切なことですが、まず、クライエントさんが自分の感情や身体の感覚をしっかりと安全に感じられるように、カウンセラーが一緒にいるのです。
クライエントさんが感情を体験している時間も、カウンセラーにはいろんな情報が伝わっています。
言葉のない沈黙は、決して沈黙ではありません。
待たせていると気にする必要もないのです。
言葉ではない言葉が、カウンセラーには伝わっています。
クライエントさんが何も語らず、自分の感情や感覚をただ感じている。
その時間は、カウンセリングの中でもとても豊かな時間です。