クライエントさんは「勇気のある方だ」と私はよく思う。
理由はたくさんあるが、その一つを先日ツイートした。
親、そのまた親から受け継がれてきた負の遺産を、自分の代で断ち切ると決めた人が、カウンセリングに現れる。
— shiho@こころが元気になる場所 (@emotion_lab) 2019年12月18日
素晴らしい勇気と賢明さだと思う一方で、この人がそれを引き受ける不条理にも思いを馳せる。
そして、両方の気持ちをお伝えする。どちらか、ではなく、どちらも、真実だからだ。
トラウマは世代を超えて伝達される。
祖父母の世代でも、両親の世代でも解決し得なかったトラウマを背負い、自分の代でこれを止めるのだと、カウンセリングの場に現れる方は少なくない。
賢い方だと思う。勇気のある方だ、とも思う。
でもどこかで、祖父母や両親がこの人のように、一度でも自分の心と向き合おうとしてくれていたなら、この人がここまで苦しむことはなかったかもしれないと、つい思ってしまう。
多くの親御さんは、子どものために自分の気持ちを押し殺すが、自分の苦しみを見つめ、ケアしようとしない場合、その傷は子どもへと受け継がれるのだと知ってほしい。
もちろん、メンタルヘルスに関する支援の乏しさやカウンセリングの敷居の高さも、こうした問題の背景にある。
助けを求められる場所がなければ、押し黙ってしまうのは当然のことだ。
カウンセラーとの間にしっかりとした信頼関係が出来上がるまでは、自分や家族のことを話すのも、とても不安なことだろう。
クライエントとは、そんなたくさんの「傷つくかもしれないリスク」をとって、カウンセリングの門を叩いた人たちだ。
助けを求める行為そのものが、変化の兆しだという言葉があるが、クライエントになるということは、心を病むということではない。
そこから回復すると決めることなのだ。
そんなことを思うとき、カウンセラーも持てる知識や力のすべてで、この人を支えたいと思う。
「いいカウンセリングだった」という感想をもしも持っていただけるなら、それは、クライエントであるあなたの勇気が、カウンセラーを励ましたからに違いない。