カウンセリングで自分のことを話すのは、とても難しいことだ。
誰かにちて話すことは、日常でたくさんやっていても、自分について話すことは、カウンセラーだって慣れていない。
そこで、クライエントさんたちは、ある「肩書き」を使う。
HSP、AC(アダルト・チルドレン)、愛着障害、毒親育ち。
こうした肩書きによって、カウンセラーに自分のことを知ってもらおうとするのだ。
これらの概念に、違和感を覚え、警鐘を鳴らしたくなるというカウンセラー側の気持ちもわかる。
私も、これらの肩書きを、クライエントさんから聴くことはあっても、自分から言うことはほとんどない。
でも、クライエントさんの中には、これらの概念によって初めて、自分の体験に言葉が与えられたと感じている人がいる。
これまで、掴みにくかった“生きづらさ”の正体の説明がついたと感じている人がいる。
だから、
「自分の輪郭はこんなふうで…」
「自分のトリセツはこれです」
「自分の人生の脚本はこんな感じでした」
という気持ちで、カウンセラーに「肩書き」を見せるのだ。
これらの肩書きにカウンセラーが不安になる必要は、実は、あまりないと思っている。
なぜなら、カウンセリングがうまく進んでいけば、クライエントさんたちは自ずと、肩書きを使わずに自分を語り始めるからだ。
肩書きを生きるのではなく、自分自身を生き始める。
HSP、AC(アダルト・チルドレン)、愛着障害、毒親育ち。
こうした「肩書き」は、まだ自分を生きる自信がない間だけ使われる「自分を説明するための言葉」であり、自分を知ってもらおうとするクライエントさんの「知恵」だ。
たくさんの「肩書き」に、カウンセラーはまず耳を傾けてみたらいいのではないだろうか。
「いつかこの人が、自分の言葉で自分を語れる日が来ますように」
そんな祈りを、心に秘めて。