Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

感情の役割と機能:例えば、悲しみについて

「感情なんてなくなってしまえばいいと思っていたけど、どんな感情にも意味があるんだとわかってよかった」

感情の機能と役割について、授業で話すと、学生がよくこんなコメントをくれます。

進化の歴史とは、退化の歴史でもあり、生存に不要なものは容赦なく淘汰されていくのが、進化のプロセスです。

感情は、そんな進化の歴史を生き残ってきました。それは、感情は、ヒトという種が生き残り、反映していく上で大切な役割を果たしてきたからなのです。

特に、基本感情(怒り、恐怖、嫌悪、悲しみ、喜び)は、ヒトが生まれながらにして持っている感情で、これらの感情は、ヒトが言葉を覚えるまでの重要なコミュニケーション・ツールであり、それぞれに固有の機能と役割を持っています。

例えば、恐怖には、危険を察知して身を守るという役割があります。恐怖がなければ、私たちはスカイツリーのてっぺんから、いとも簡単に飛び降りてしまうでしょう。

怒りには、土足で踏み込んでくる他者に対して、適切な境界線を設けるという役割があります。怒りがなければ、私たちは、ずる賢い人から利用されてしまいます。

悲しみには、活動性を減らすことによって、大切なものを失ったショックから立ち直るための英気を養い、他者からの思いやりを引き出すという役割があります。

悲しみは、大切なものを失った時に私たちが感じる感情ですが、失った痛手を和らげるために周囲の人々とのつながりを強めてくれるのです。

映画『インサイド・ヘッド』は、この5つの基本感情がキャラクターとして描かれた、とても興味深い映画でしたが、この映画のなかで、悲しみの役割が描かれている場面を紹介します。


Inside Out - Sadness helps Riley

引越しによって失った大切な仲間や思い出の場所には、もう戻れない。でも、それを一緒に悲しむことで、家族の結びつきが深まり、喪失を乗り越えられる。

そんな場面が描かれています。

確かに、感情はいつもいい感覚を伴うものではありません。生きていれば、感情があるが故に傷つく場面にも多々遭遇します。

しかし、そんなときには、自分の心にこう問いかけてあげてみてください。

「この感情(気持ち)は、何のためにここにあるんだろう」

「この感情が、私に伝えようとしていることって、何だろう」

感情は本来、あなたを守るためにあるものです。

あなたにとって大切なことを伝えようと、一生懸命声を張り上げているのかもしれません。