Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

心の複雑さをそのまま感じてあげるということ。

簡単なことをわざわざ複雑にして語るというのは、まったくナンセンスなことですが、複雑なものをあっさり簡略化してしまうことにもまた、リスクがあるような気がします。

世の中には、人の心を簡単にわかろうとしたり、操ろうとしたりする情報があふれています。

しかし、そうすることで逆に、心を捉える私たちの中のレンズがゆがんでしまったり、心そのものをいびつにする必要が出てきてしまうのではないかと、個人的には心配しています。

人の心は、まったく単純ではなく、とても複雑なものです。

例えば、私たちは、外側のある出来事に対してだけ、何らかの感情を抱くと思っている人もいるかもしれません。

しかし、私たちは「自分の中の感情に対する感情」を抱くこともあります。

自分の中の悲しみに対して嫌悪感を持ったり、自分の中の怒りに対して恐怖を抱いたりするのです。

例えば、大切な人と喧嘩をしたときには、相手に対する怒りと、亀裂の入った関係を悲しむ気持ち、そして、その悲しみや怒りに対する不安や嫌悪を持つというふうに、いくつかの感情を同時に心の中に抱えることになります。

ここで大切なのは、心の中にいくつかの感情を抱えられるスペースがあるとか、いくつかの感情を抱えておくための心の筋力が育っていることです。

心の中には、同時にいくつかの感情が存在するものなのだ、と思えること自体が、心の複雑さに対して寛容であると言えるのですが、その感情の数や量に耐えられる力があるということが大切です。

心はまったくシンプルではない。

むしろ、複雑で、手のかかる育てがいのある生き物のように思って、接してあげるのがよいように思います。

1日の終わりに、自分が感じた感情の数を数えてみてください。

そして、たくさんの感情に反応した心に「今日も1日ありがとう、お疲れさま」と話しかけてあげましょう。

そうすると、心は、もっとあなたのために鍛錬して、たくさんの感情をあなたに届けようとしてくれるはずです。

そんな心との相互作用を通して、感情に対するキャパシティーを広げていくことが、私たちが自分の心にしてあげられるお世話なのだと思います。