「子どもの頃、親に自分の感情をしっかりと受け止めてもらえなかった。
それはあなたの責任ではない。
でも、それによって今も生きづらさを抱えているとしたら、
それを変化させる責任は、あなた自身にある。」
感情に注目した心理療法の本を読んでいると、時々こうした記述を目にすることがあります。
責任=responsibility。
責任と聞くだけで、肩や背中がズーンと重くなる感じがする人もいるかもしれません。
しかし、英語で書くと、responsibility。つまり、response+ability です。
哲学者の鷲田清一さんは、resposibilityを上のように分解して、こう訳しました。
「応じる用意がある」
このニュアンスに沿って、冒頭の言葉をもう一度読んでみると、どうでしょうか。
今、自分が感じること、その一つ一つに、きちんと応じる用意がある。
そんな自分になっていくことが、カウンセリングにおける目的の一つです。
そして、これは、いわゆる「フォーカシング的態度」や「マインドフルネス」、あるいは「セルフ・コンパッション」によってもたらされる状態と、とても近いと思いました。
日々、生きているだけで、私たちはいろんな感情を体験します。
満員電車や人ごみでの苛立ち。
頑張りを認められない悔しさ。
理不尽な上司への怒り。
好きな人に想いが届かない悲しさ。
その一つ一つの感情に、他の誰でもない、自分自身が「応じる用意」をする。
「どうしたの」
「悔しいね」
「腹が立つよね」
「つらかったね」
まずは、そんなふうに、自分の感情に気づいて声をかけることから始めてみましょう。
それが、心の健康だけでなく、ひいては良好な対人関係、仕事のパフォーマンスの向上につながっていくのです。