嫌味な先輩からのとげのある言葉。
上司からの不条理な叱責。
話を聴かないパートナーに、反抗期の子ども。
周りの人の迷惑も考えず、到着した電車に我先に乗り込むオバサン。
ストレスのもとは、1 日のうちにありすぎるほどあるかもしれません。
「なんで自分がこんな目に遭うんだろう…」と落ち込んだり、イライラするのは当然のことです。
しかし、だからといって、自分まで家族や同僚、あるいは道行く知らない人に八つ当たりしていては、ネガティブな感情が伝染していくだけでしょう。
海外の感情研究の論文には、この悪循環を止めるヒントが書かれています。
ポジティブな感情は、ネガティブな感情のantidote(解毒剤)になる。
感情の変化は弁証法的な方法で起こると考えられています。
つまり、不快で苦痛な感情が起こったときには、その感情とは反対の感情を喚起することによって、新しい感情状態を作り出すことができるとされているのです。
いつまでもイライラした状態でいることは苦痛です。それが、八つ当たりやとばっちりによるものであればなおさらでしょう。
この弁証法的な感情生成の仕組みを知っていると、次のような対処方法をとることもできるかもしれません。
嫌な目に遭ったときほど、人に優しくしてみる。
もちろん、嫌なことをしてきた相手に優しくしろというのではありません。
まったく関係ない人でいいのです。たまたま入ったお店の店員さん、家族や友人、妊婦さんやお年寄りに公共の乗り物で席を譲るのもいいかもしれません。
相手が喜んでくれた、笑顔になってくれたというだけでうれしいですし、いいことをしたなという満足感に浸ることもできるかもしれません。
こんなふうに、いい気分になることが、嫌な目に遭ったイライラを中和してくれます。
そうは言っても、イライラが魔法のように消えてなくなる訳ではありません。
嫌な出来事がふと蘇ってくるたびに、自分がした「いいこと」を思い出し、喜んでくれた相手の顔を思い出すうちに、じわじわとイライラがおさまっていくのです。
情けは人の為ならず、とはよく言ったものだなぁと思います。
人に優しくすることで、自分のイライラがおさまっていく。
そんな循環を生み出せたら、嫌なことをした相手にさえ「ありがとう」と思えるかもしれません。
ぜひ、試してみていただければと思います。