カウンセラーがその言葉を発したとき。
クライエントさんご自身の口からその言葉がこぼれたとき。
クライエントさんの瞳から、わっと涙がこぼれ落ちる。
そんな言葉の一つが、「だいじょうぶ」という言葉です。
先は見えなくて不安で仕方がないとき。
頼れる誰かがいなくて心細かったとき。
取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと恐怖で震えていたとき。
「だいじょうぶ」
と言って支えてくれる誰かがいてくれたらよかった。
カウンセリングでは、そんなかつての切実な願いが、現在にふっと顔を出す瞬間があります。
私たちは思っている以上に、この「だいじょうぶ」という言葉に飢えています。
不安で、心細くて、怖かったとき、私たちを支えてくれるはずの人(例えば、親や先生、パートナー)もまた、不安で、心細くて、怖かったのかもしれません。
「そんなことで泣いてどうするの」
「甘えないで、自分で何とかしなさい」
「怖がっていても仕方ないじゃないか」
カウンセリングをしていると、ただ、「だいじょうぶ」と言って支えてほしいという小さな願いも、簡単には叶えられないものなのだと痛感します。
あるいは、「不安や恐怖に怯えている人に、大丈夫と言い切るなんて無責任だ」と思って、この大事な言葉を飲み込んでしまう人もいるかもしれません。
しかし、クライエントさんたちの体験を聴いていると、「大丈夫」という言葉は、必ずしも確実さを保証するものでなくていいのだと思えてきます。
例えば、停電が起きて部屋の中が真っ暗になったときのことを思い浮かべてみてください。
そのとき、私たちが一番にすることは何でしょうか。
懐中電灯でもロウソクでも、スマホの画面でも、とにかく明かりをつけると思います。
「だいじょうぶ」という言葉は、不安や恐怖という暗闇の中の希望の光です。
希望はある。可能性がある。心配ない。
だから、「だいじょうぶ」。
そう言って、まずは心に明かりをつけてあげる。
不安や恐怖で固まった身体に、呼吸をさせてあげる。
そんな大切な力が、「だいじょうぶ」という言葉にはあるのだと思います。