脳画像から、感情を読み取る技術は、近年目覚ましい発展を遂げています。
脳神経科学の進歩と感情理論の発展は切っても切れない関係にあり、感情がどのように働くかを知るために、脳神経科学研究の知見は、欠かせないものになっています。
今回は、カーネギーメロン大学で行われた興味深い実験をご紹介します。
被験者として研究に協力したのは、カーネギーメロン大学で演劇を学ぶ学生たちです。
Method actingという演劇手法を用いて、彼らには9つの感情(怒り、嫌悪、恐怖、欲望、幸せ、誇り、恥、羨望)を身体でしっかりと感じ(embody)、体現できるよう練習したのち、脳画像をスキャンする機械の中に入って、それらの感情を表してもらいました。
その結果、なんとコンピュータによる脳画像診断は84%の確率で、彼らが表現した感情を読み取ることができたのです。
しかし一方で、他の人のデータを使用したときは、判定の精度が下がり、汎用性は高くないことも示されました。被験者Aの感情を、被験者Bの脳画像のデータを元に読み取ろうとすると、正確さは71%に低下したのです。
さらに、この研究から、感情を区別する4つの指標が明らかになりました。
①ポジティブかネガティブか
脳画像による判定でも、幸福感(happy)と恥(shame)、悲しみ(sadness)と誇り(pride)は混同されることなく、区別されました。
②覚醒(arousal)の程度
例えば、怒り(anger)と悲しみ(sadness)は、エネルギー量の点で判別可能です。
③社会的関連性
怒りや羨望には他者の存在を必要としますが、嫌悪は個人単独でも生じます。
④生殖における役割
欲望(lust)は、他の感情とは明らかに異なる画像を示しました。これは生殖において決定的な役割を果たすためだろうと、研究者は指摘しています。
この実験は、まるで胃のレントゲン写真を撮るように、脳をスキャンすることによって感情の状態を探ろうとする試みです。
現在、心理臨床家はさまざまな心理検査によって、人の感情の状態を探ろうとしていますが、それが脳画像にとってかわるといった事態も、将来的には起こりうるのかもしれません。