『ぼくはぼくだよ』という絵本をご存知でしょうか。
主人公のカメレオンは、環境に合わせて自分の身体の色を変えることができます。
でも、自分の本来の色は何色なんだろう。
主人公のカメレオンがそんな疑問を持ち、自分の色を探し始める。
そんな内容だったと思います。
私たちも、さまざまな環境で、いろいろな役割を期待されたり、押し付けられたり、担ったりする中で、自分がどんな人間だったかわからなくなることがあります。
なかには、子どもの頃に持っていたはずの色を、乱暴に塗り替えられてしまった人もいるかもしれません。
あるいは、他者との間で色を重ねてもらえる体験ができずに、どんどん自分の持っていた色が薄まり、褪せていってしまうのを感じてきた人もいるでしょう。
自分の色を、もう一度見つける。
誰かに押し付けられた色を、塗りなおす。
もしくは、今の自分には、これまでとまったく違う色がふさわしいと思い立つこともあるでしょう。
カウンセリングの中でも、クライエントさんが今まで忘れていた、”本当のその人の色”を発見できることがあります。
そのとき、クライエントさんの表情は生き生きとし、身体は息を吹き返したようになります。
「あぁ、これが本来のこの人なんだな」
とわかる瞬間です。
その色が今まで、恥ずかしいとか、情けないとか、みっともないと言われ、煙たがられてきたものだったとしても、深い感情の作業を通して取り戻したその輝きには、「もう誰にも文句は言わせない」という迫力と力強さがあります。
その人本来の色を取り戻す瞬間に立ち会えたとき、心から、この仕事をしていてよかったなと思います。