クライエントさんの感情をたどっていくと、その人が元気になるために「戻るべき場面」に連れて行ってもらえる。
カウンセリングの中では、よくそんなことが起こります。
クライエントさん自身は、その場面の記憶が出てくると、「もう過ぎたこと」と取り合おうとしなかったり、「今更変えられない」と戸惑いを見せたり、「そんな昔のことをまだ引きずっているのか」と自分を責めたりします。
これも、その場面にもう一度戻っていくことが「危険」だと、別の感情がクライエントさんに伝えるからです。
それだけ、つらかった体験や傷つき、心の痛みがそこに眠っているということなのです。
でも、それが「つらい体験」になったのは、その体験を「ひとりで抱えなくてはならなかったから」です。
今度は、カウンセラーが一緒にいます。
大人になったクライエントさん自身も、当時のクライエントさんの味方をしてくれるでしょう。
感情が思い出させてくれる出来事を、今度は違った状況で体験する。
そうすることで、「つらくて思い出したくもない出来事」が、「自分の強さを証明してくれる出来事」や「もう覚えていなくてもいい出来事」、「やっと手放せる体験」に変わります。
すると、「つらくて惨めな過去を持った自分」が、「つらい過去を生き抜いた勇気のある自分」に変わり、クライエントさんのストーリーが変化します。
起こった出来事そのものは変わらなくても、その出来事を違った視点から語ることができるようになれば、今からは編み直したストーリーの上を歩んでいくことになります。
カウンセリングを通して、クライエントさんに過去の捉え方を変え、今の自分が手にしたものを確認し、新しい道に歩み出してもらう。
これが、過去は変えられなくても、カウンセリングに取り組む意義だと思っています。