Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

“カウンセラー”が感情から逃げないこと。

クライエントにつらい気持ちを体験させることに躊躇してしまう。

感情や体験に焦点を当てる心理療法を勉強していると、よくこんな声を耳にします。

でも、それは、カウンセラー自身も感情の扱いに不慣れなだけです。

つまり、カウンセラーの中の恐怖心がプロセスの邪魔をしているのです。

自分も経験してきたことなので、わかるのですが、実はクライエントの方がすでに感情に向き合う準備ができているのに、カウンセラーがそれを意識的に、もしくは無意識的に避けてしまうことは少なくありません。

 

例えば、クライエントが「自分は恥ずかしいという気持ちでいっぱいになってしまった」と言い、その恥を外に出す作業をイメージの中でやってみたとします。

何回やっても、次から次へと恥があふれてきて、なかなか終わりが見えない。

そんなとき、カウンセラーがつらい感情に耐えきれなくなって、その作業をやめにしてしまったら、クライエントはただ、恥の感情をたくさん感じただけで、その上、その感情には終わりがないという絶望感をも味わうことになります。

 

しかし、もし、カウンセラーがつらい感情に耐えて、こんなふうに言えたとしたらどうでしょう。

「そんなにたくさんの恥を抱えてきたんですね。すごく苦しかったと思います」

すると、クライエントも気づいてくれます。

「あぁ、自分は、こんなにたくさんの恥を抱えて生きてきたんだなぁ」

 

これは、誰にも見せてこなかった、クライエントの痛みです。

そこから、カウンセラーが目を背けないこと。

「こんなに深く刺さっていたら、そりゃあ痛いよね」

「この痛みによく耐えてきたね」

と言いながら、傷口を一緒に手当てすることが、カウンセリングで私たちがクライエントに提供できる価値の一つです。

 

傷の深さ、傷の多さを見ることができたら、クライエントが決して「つらい気持ちをたくさん抱えたかわいそうな人」ではなく、「つらい痛みに耐えてきた強い人」であると心の底から感じられ、自然とクライエントへの敬意が生まれるはずです。