伝えているつもりでも、うまく相手に伝わっていない感じがする。
そんな経験は、誰もがしたことがあると思います。
伝えていることと、伝わっていることは、イコールではありません。
だから、伝える言葉で伝える工夫というのが、本当に大切だなと思っています。
先日、カウンセリングの中で、あるクライエントさんとこんな話をしました。
「感情って、子どもみたいな感じで、見てくれないといつまでもわーわー泣いて、こっちを煩わせるんですけど、どうしたの?って言って見てあげると、スーッと落ち着くんですよ」
すると、
「あー!なるほど!」
と、クライエントさんがパァっと明るい顔で仰って、私はいつもより伝わった感じがするなと、そのとき思いました。
子育てを経験してきた女性だったので、この例えがとてもわかりやすかったようなのです。
これまでにも感情に関する知識は伝えてきたけど、確かに、こんなふうに伝えたのは初めてでした。
専門的な事を噛み砕いて伝える努力は、これまでもしてきたつもりだったのですが、クライエントさんの生活や価値観にフィットした例えを使うと、大切な心の知識を受け取ってもらいやすくなるのだなと感じました。
例えや比喩を使うというのは、現象を一旦メタ認知して、別の現象と結びつけるというちょっとややこしい作業ではあるのですが、クライエントさんとの波長があっていると、ぴったりな例えが自然と生まれることもあります。
クライエントさんが生み出してくれることもあります。
その瞬間は本当に美しくて、カウンセリングってオーダーメイドだなと感じます。
その人と私との間でしか、体験できない何かのような気がするのです。
一方で、常日頃から、感情に関する比喩のネタを仕込んでおくのも好きなので、いろんな手札も持っているつもりですが、その手札の中からさらに、自分が「伝えたいもの」ではなく、相手に「伝わるもの」を選ぶという意識を、これまで以上に持っておきたいと感じました。