恥(shame)や自己否定感が強い人には、代わりに怒って、肯定する。
こうしたかかわりがとても大切だと思う出来事がありました。
私の友人が職場でパワハラを受けていたときのことです。
事あるごとに、「お前の代わりなんかいくらでもいる」と言われ、彼女が退職の意思を示すと、「どこに行っても役に立たない。ここ以外にお前を雇うところなんかあるはずない」と言われる。
完全なダブルバインドの状態でした。
努力家で優秀な友人に恥(shame)を植えつけて、「自分はダメだから」という自己否定感でいっぱいにし、支配しようとする職場の人間が許せなくて、私は彼女の代わりにたくさん怒り、彼女の持っている能力や価値を伝え続けました。
「職場の人の言っていることは間違ってる」
「あなたが抜けたら、職場にとっては大きな痛手」
「あなたはそんなふうに扱われていい人間じゃない」
「もっと、あなたの力を生かせる環境があるはず」
彼女は涙を流しながらそれを聞き、自分では力不足ではないかと感じて躊躇していた別の仕事に応募。
無事に採用され(彼女の実力とキャリアを考えれば当然のこと)、今では得意の語学を生かして海外で働いています。
劣悪な職場環境、卑劣な上司の言葉のせいで、彼女の自尊心は深く傷ついていましたが、そこから這い上がる強さまでは失っていなかった。
当時はたくさん心配もしましたが、今となっては本当に良かったと思っています。
恥(shame)や恥による自己否定感は、毒のように身体に回って、その人の物事の受け止め方を歪めます。その結果、自分には何の価値もないと思い込み、ひどい環境にとどまってしまったり、引きこもってしまったり、最悪なケースでは自ら命を絶ってしまうこともあります。
恥の解毒剤になるのが、怒りや他者からの肯定です。
恥を植えつけられて弱った心には、代わりに怒ってくれる人、代わりにその人の価値を伝えてくれる言葉が役に立ちます。
身近な人が恥や自己否定感に苦しんでいたら、ぜひ、怒りと肯定で、その恥を取り除いてあげてください。