今日は、こちらの本をご紹介したいと思います。
「自己愛人間」というとすごく特殊で、日常ではそうそう会うこともない人のように感じられるかもしれません。
しかし、「自分が引き受けきれない恥の感情を、周りの人間に振り向けて、自分を守っている」人と言い換えるとどうでしょう。
自分の失敗を部下のせいにする上司。
自分を正当化するために、影で顧客や会社の文句ばかり言う同僚。
自分のコンプレックスを子どもを通して解消しようとする親。
自分の欠点を棚に上げて、相手の外見や言動を非難するパートナー。
そんな身近な人の顔が思い浮かびませんか?
「自己愛人間は、自分の恥の感情を処理するために他人を利用する」というこの本の一節を読んだとき、これまで説明のつかなかった苦しみに、パッと言葉が与えられたような気がしました。
自分の生きづらさの理由が解き明かされたと感じる方もおられるかもしれません。
「恥を感じない」という姿は、いかにも強くて立派な態度のように思われています。
しかし、この本は、
「そこであなたが引き受けなかった恥は、結局、周りに誰かが引き受けているのではないですか?」
「あなたが感じている、恥の感情を生み出す無力感や無能さ、怒りの感情をコントロールできないという惨めさは、本当にあなたが感じなくてはいけないものですか? 周りにいる、いかにも堂々として自信たっぷりで、他の人のことを批判してばかりいる誰かから、巧妙に振り向けられたもの・投げ込まれたものではないですか?」
という、意義深い問いを投げかけてくれます。
自己愛が傷ついたと認めることは難しいことです。
しかし、一人一人が自分の恥を、自分のものとして引き受けていくことができれば、対人関係の問題の多くが解消されるような気がします。
今回この本をご紹介したのは、親から自分の気持ちを受け止めてもらえなかった人や、いじめやハラスメントなどのつらい体験をした人に、「恥の投げ下ろし(本書の表現)」という現象を理解し、適切な対応を知るための情報をお勧めしたかったからです。
苦境を経験した人の中には、自己啓発本などを熱心に読み、「100%自分原因説」や「親や環境を選んで生まれてきたのは自分」という言葉に触れ、傷つきを深めている方も少なくないと感じます。
相手の恥まで引き受けてきた人に必要なのは、「原因は私ではなく、相手にある」「親も環境も、自分で選べるものではない。それを選んだのは私ではない」という、むしろ正反対のメッセージです。
サンディ・ホチキスの本の中には、自分を守るための言葉、大切な人を守るための言葉がたくさん散りばめられています。