先日、とある用事で、データ印刷のお店に行った。
対応してくれた店員さんと、用紙のタイプや加工について相談していたとき、私の背後にある自動ドアから、別のお客さんが入ってきた。
その人は入ってくるなり、店員さんに「○○ってできます?」とだけ聞いた。
あからさまに苛立っているわけではないけど、早口で、硬い木の棒がスコンと飛んでくるようなトーンだった。
店員さんが答えると、その女性は先ほどと同じトーンで「すぐできます?」と聞いた。
対応する店員さんの声にも抑揚がなくなり、能面みたいなトーンになっていった。
結局、その女性は、自分の求めていることはできないと思ったようで、そのままお店を後にした。
「こんにちは」の一言があるだけで、ずいぶん違っただろうなぁと、改めて【挨拶】の大切さを感じたし、「すみません」「ちょっとお尋ねしたいんですけど」といった、相手に【許可を取る】コミュニケーションも、店員さんに気持ちよく対応してもらい、結果的に自分も満足するために、役に立っているんじゃないかなと思った。
コミュニケーションは、言いたいことを言葉で言うだけじゃない。
自分が伝えている内容を、相手が受け取りやすくするために、私たちは表情や声のトーン、話し方をさまざまに変化させるという、こんなめんどくさいことを、進化の過程においても捨てずにきたのだ。
人間という種が守り、受け継いできた知恵は、極力使ったほうがいいなと思った。
そしてふと、フォーカシングやAEDPといった心理療法の介入技法の中にも、【挨拶】や【許可をとる】工夫があることに気づいた。
心理療法の土台には、細やかなコミュニケーションがあり、それは日常でも使い、磨いていけるものなのだ。