カウンセリングを通して、自分の感情との付き合い方を知っていくと、クライエントさんの口から自然と、「部屋」や「スペース」「場所」といった自分の感情の居場所を表す言葉が聞かれるようになります。
このように、自分の中に感情の居場所や置き場所ができると、感情との付き合い方はずっと楽になります。
そして、今まで自分がいかに感情を無視してきたか、出てこないように押し込めていたか、気配を察知した時点で、心の中から追い出そうとしてきたかにも、気づけるようになります。
感情は、私たちにとって必要なことを教えてくれる、人生を歩むためのコンパスです。
怒りは、自分が大事にしたいものが傷つけられていると教えてくれます。
悲しみは、大きな喪失感から回復するための助けや休息が必要であることを教えてくれます。
喜びは、それが自分にとって大切で、良いもので、力をくれるものだから、何度も繰り返すようにと言います。
嫌悪は、有害なものが自分の中に入ってきていると伝えてくれています。
恐怖は、危険なことから自分の命を守る必要があるときに働きます。
漠然とした不安や、心がざわつく感覚、なんだかよくわからないけど嫌な感じというのも、感情と同じように、その居場所に招き入れ、そっと話を聞いてあげましょう。
私が最近好きでよく使っているのは、「その感情やその気持ちの隣に、そっと座ってみる」という表現です。
「話してもいいし、話さなくてもいい。でもちょっと、隣にいさせてもらえるかな?」
そんなふうに、自分の気持ちや感情に声をかけてあげてみてほしいのです。
普段邪険にされている感情は、そんなふうに接してもらうと、最初はびっくりするかもしれません。
無視されることに慣れてしまって、最初は「今更なんだよ」と悪態をついてきたり、すっかり拗ねて口を聞いてくれないかもしれません。
そんなときは、「今までちゃんとみてあげていなくてごめんね」と、ストレートに謝ってみるのも役に立ちます。
そのあとで、「これからは、ちゃんとここにあなたの居場所を用意しておくからね」と伝えてあげるのもいいでしょう。
その感情や気持ちは、何か理由があってここにきた。
邪険に追い払ったり、無視したりする前に、ちょっとそんなふうに思ってみてあげてほしいのです。
This being human is a guest house.
私たちの一人一人の心が、自分の気持ちや感情をあたたかく、差別なく迎えるゲストハウスであれたらと思います。