人が、カウンセリングの門を叩く理由はさまざまです。
性別を問わず多い理由の一つは、「大切なものができたから」です。
自分のために行動を起こすことが苦手な人でも、大切なものを守りたいという気持ちに背中を押されて、カウンセリングというまだまだ敷居の高い場の門を叩いてくれます。
子ども。
パートナー。
家庭。
社会的な立場。
仕事。
心身の調子を崩したことで、健康の大切さに気づいたからという人もおられます。
守るものができたときに、人は強くもなりますが、誰かに弱みを見せることもできるようになったり、誰かの助けを借りることもできるようになるのだなと思うと、何だかとても興味深く感じます。
カウンセリングは、「問題のある人が受けるもの」「心が弱い人が受けるもの」「自分の問題に自分で対処できない人が受けるもの」という偏見がまだまだあります。
そのせいで、多くの人が「私には関係ない場所」「あんなところに行っていると知られたら、おしまいだ」などと感じています。
でも、私が実際お会いしている人たちは、大切なものを守るために強くなろうとしている人たちであり、大切な相手といい関係を保っていくために自分自身を見つめ直そうとしている人たちであり、大切な人を傷つけたことがあっても、それを何とか修復して、相手にとってよりよい存在になれるように努力したいと決意した人たちです。
私は、カウンセラーとしても、一人の人間としても、彼らが持っている勇気や愛情に、大きく心を動かされます。ときに圧倒されることもあるくらいです。
自分だったら、大切な何かのために、ここまで自分をさらけ出すことができるだろうかと思うのです。
そして、こんなふうに感じたことを言葉にして伝えると、中にはハッとされる方もおられます。
「何かを守ろうとしてここにきた」ということが、カウンセラーの私からみると明らかでも、ご本人はそう言われるまで、そのことに気づいていなかったというケースも、実はたくさんあるのです。
そんなとき、私はとてもホッとします。伝えられてよかった、気づいたいただけてよかったと思うからです。
カウンセリングにまできているのに、そこまでして自分が状況をよくしようとしていることや、そこまでして大切な人との関係を修復しようとしていることに、人は目が向かないものです。
勇気を出してカウンセリングの門を叩いてくださったことへの感謝と労いと尊敬を込めて、クライエントさんが今すでにしている努力、今すでに持っている愛情、今すでに持っている勇気を、「ここにありますね」と一緒に発見できる瞬間は、私にとっても大切な瞬間になっています。