「カウンセリングで自分を変えたい」というモチベーションは、とても大切なものでもある一方で、それが強すぎると、「何も変わっていない」などとせっかく起こってきた変化を過小評価してしまったり、「早く変わらなきゃ」というプレッシャーになって、カウンセリングに行くこと自体が億劫になってしまうこともあります。
私自身がカウンセリングを受けた経験からお話しすると、
「カウンセリングを受けたからといって、別人のように変わるわけではない」
「カウンセリングを受けたからといって、明日から世界がバラ色になるわけではない」
「1回で大きく変わるというよりは、ある程度の回数を重ねて、時間が経った頃にふと、“あれ?なんか前と違うな”と感じることも多い」
というのが、今のところの結論です。
まったく変化がないかというと、もちろん、そんなことはありません。
私の場合は、カウンセリングを受けたことによって、
「自分がハマりやすい人間関係のパターンに気づけるようになり、関わるべきではない相手から距離を取ることができるようになった」
「もっと自信を持つべきだと、自分で自分を励ませるようになった」
「過去の傷つきに反応している自分に気づいて、対応を保留できるようになった」
などの変化がありました。
これはまるで、自分の中に「自分専属のセラピストがいる」ような感じです。
メタ認知ができるようになる(自分の考えや感情、行動を客観的に見る目が育つこと)だけではなく、自分を信じて、根気強くかかわろうとする自分がいるという感覚があります。
クライエントさんを見ていても、大きな変化ではなく、こうしたマイナーチェンジをいくつか重ねている方が多いように思います。
例えば、こんな方もおられます。
「今までは変わることを目的にカウンセリングに来ていたけれど、本当は、変わらなくていいって誰かに言ってほしいのかもしれない」
と、自分の本当のニーズに気づくというパターンです。
変わらなければならないという考えが、そもそも自分自身を否定する行為であったことに気づいて、本当に自分が求めているのは、このままの自分に十分価値があり、何も変える必要がないんだと、自分にも周りの人にも認めてもらうことだと知ったこと。
それが、その人にとっての「変化」でした。
カウンセリングで起こることは、
・自分が目指すものの変化
・自分の土台(ベース)の変化
・自分自身との向き合い方の変化
・変化を起こすための気づきが高まる
といった、一見些細な変化です。
クライエントさんもカウンセラーも人間なので、変化はどうしてもアナログ的です。
デジタルの世界のように、スイッチで何かが切り替わったり、リセットボタンで何かが終わったり、アップデートして昨日と明日で機能が変わることはありません。
太陽が沈む位置と時間が、日々少しずつ変わっていき、春から夏、秋から冬へと季節が巡る。
そんな中で、ふっと感じる瞬間があるはずです。
「あ、秋の空だな」と。
クライエントさんの助けになれるよう、カウンセラーもさまざまな理論を学び、テクニックを磨いていますが、繰り返すことや待つこと、時間をかけることが変化を支えているような気がします。