カウンセリングの専門書を読んでいると、うつには2種類あると書かれています。
自己批判から生まれるうつ。
そして、承認を求めることによるうつです。
自己批判から生まれるうつは、イメージしやすいかもしれません。
内なる批判者(inner critic)によって、「そんなんじゃダメ」「まだまだ」「本当に何もできないんだから」などと責め立てられると、健全な自己イメージが持てなくなります。
「ダメな自分を許せない」
「自分の欠点を受け入れられない」
と、完璧であろうとして心身を酷使し、うつ状態に陥ってしまうのです。
このタイプのうつと闘う人は、自分の中の内なる批判者と向き合い、和解するか、決別してその声の影響を受けないようにする必要があります。
もう一つのタイプ、「承認を求めるうつ」は、少し説明が必要かもしれません。
こちらは、愛してほしい・認めてほしい相手からの愛情や承認を求めても、それがなかなか得られないことによって、健全な自己イメージが持てなくなります。
「愛されないのは、自分が悪いからだ」
「認めてもらえないのは、自分がダメだからだ」
そんなふうに思ってしまうのです。
先ほどの自己批判によるうつの場合は、自分の中にいる内なる批判者、つまり自己の一部と向き合うことで解消されることも多いのですが、「承認を求めるうつ」は、その対象が上司や親、パートナーといった“他者”である場合がほとんどです。
そのため、「相手が自分を愛してくれれば、この苦しみも終わるはず」と、自分と向き合うのではなく、相手を変えようとしてしまいがちです。
しかし、他者の言動はコントロールできるものではないので、何度も失望を味わい、つらい状況からなかなか抜け出せません。
このパターンのうつと闘っている人は、
「自分を愛し、認めるのは、他の誰かではなく自分自身なんだ」
と、どこかのタイミングで腹をくくる必要があります。
こんなふうに腹をくくるということは、本当に愛してほしい相手からの愛情や承認を諦めるという喪失感を味わう体験になるのが、つらいところです。
それでも、自分がほしい愛情や承認は、この相手からは得られないと心のどこかでわかっている場合がほとんどなので、この喪失による悲しみは、しがみついていた手をゆっくりと離すような安堵感も伴います。
相手が認めてくれなかった自分。
相手が愛してくれなかった自分。
そんな自分には価値なんてないと思っていたけど、本当は、優秀で、優しくて、真面目で、誠実で、心の痛みがわかる人間だった。
なんだ。全然、捨てたもんじゃないじゃないか。
それがわかったとき、うつはきっとよくなります。
承認を求めるうつの背後にあるのは、相手に自分の価値を決めさせようとしている、自信のなさでもあるのです。
誰かに愛されなかったからといって、それで自分の価値が決まるわけじゃない。
誰かに認められなかったからといって、自分の価値は変わらない。
承認を求めるうつに苦しんでいる人は、
「もっと自分を大切にしてください。あなたは十分素敵な人なんだから」
と、うつに教えられているのかもしれません。