先日、ストレス状況下において、女性はより共感的になるという内容の記事を紹介しました。今回は、それに少し関連して、DV被害や共依存のことについて取り上げたものを、いくつかご紹介します。
Ray Rice insident については、下記をご参照ください。
NFL JAPAN.COM|レイブンズがRBライス解雇、夫人への暴行映像が公開直後に
この暴行映像が公開された直後から、被害者と同じようにパートナーからDVを受けている女性たちが、夫のそばにとどまってしまう理由や心情をツイートし、「そこにとどまった理由(#WhyIStayed)」というハッシュタグで、彼らの体験を拡散するツイートも現れ、この内容に関するツイートは92,000以上にも上りました。
アメリカでは女性の4人に1人がDV被害を経験したことがあると言われており、大きな反響を呼んだようです。
この記事では、DVに関する以下のような専門家の指摘が紹介されています。
・精神的な事柄と身体的な事柄の両方が、逃げ出すことを阻む要因となりうる。
・DVの被害者は、パートナーに対し「優しいところもある」というポジティブな側面に注目しがちで、不定期的に与えられる相手からの優しさを期待して待つ傾向があり、これは、いつ来るかわからない大当たりを期待するギャンブル依存とも共通する特徴である。
・DV被害者たちが過酷な状況にピリオドを打てない理由は、その状況を耐え忍んでいるうちに、自分にも安全を得る権利があると感じにくくなってしまうためである。
Ray Riceの妻が、この事件の後も夫をかばい続けていることで、被害者側の心理への関心はさらに高まったようです。
「彼女は夫を愛しているのだ」と、妻の姿勢を擁護する意見もあるようですが、DVの被害者は、しばしばストックホルム症候群に陥ることが知られており、先日、このblogで紹介した記事の内容とも合わせて考えると、女性の共感性が過酷な状況で発揮されてしまった結果でもあるのかもしれません。
自身がDVを受けた体験を一冊の書籍にまとめたLeslie Morgan Steinerという女性のプレゼンテーションも、Tedで配信されています。
加害者側は、すでに人生のある側面に無力感を覚えている人間を標的にします。このような人たちは元々「自分は本当に価値ある存在なのだろうか」と感じていたり、幼少期に虐待を受けた経験を持っていたりするため、暴力を親密さの代償として受け入れてしまうのです。
また、時に、暴力を受けることを、特別なことのように錯覚してしまう人もいます。Steinerのプレゼンテーションの中にも、「彼が私を虐待しているなんて思わなかった。自分が battered wife(DVを受けている妻)だという自覚もなかった。私は自分のことを、困った男に惚れ込んで彼を愛し抜く強い女性だと思っていた」という言葉が出てきます。
愛で満たされなかった幼少期を送った女性には、少なからず共通して、自分がもらえなかった愛情をパートナーに注ごうとする傾向が見られます。それは、本来は、カウンセリングや心理療法を通して、幼少期の自分の傷つきを癒すために使われなければならない愛情とエネルギーなのですが、自分を傷つけるパートナーを理解しようとしたり守ろうとしたりすることが、幼少期の自分の傷を癒す体験となるのも、また事実なのです。
このような被害者側の愛情や過去の悲しい経験だけではなく、日常的な暴力によって植えつけられた恐怖心も、被害者の足かせとなります。DVの加害者が被害者を殺そうとする事案の70%以上は、被害者が加害者の元を去った直後に起こっています。「このままでは殺される」という確信が、多くの被害者の目を覚まさせるのですが、そこからの脱出が、最も危険な戦いとなるという点に、この問題の根の深さを感じます。
つらい状況でより共感的になれるというのは、女性が持つとても素晴らしい能力です。
ただし、そうした素晴らしい共感性を、悪意ある他者に搾取させないための自尊心をしっかりと育んでおくことも、女の子を育てる上で、とても大切なことなのだと思います。