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emotion laboratory

感情は人生の羅針盤

うつには、薬と心理療法の併用が効果的。

うつ病には、お薬を服用するだけよりも、抗うつ薬と心理療法の併用が効果的であるという認識は、一般的になりつつあるようです。

同様の話題が、以前NYTimesでも取り上げられていました。

time.com

ここで、心理療法として紹介されているのは、認知療法です。

もちろん、うつ病に対する効果を持つのは、認知療法だけではないのですが、この記事が興味深いのは、認知療法で使われる脳の部位と、抗うつ薬が作用する脳の部位に言及している点です。

抗うつ薬は、脳の深層部(具体的には、脳幹の付近)に作用し、ここは感情が生成される部位です。うつ病で問題となる感情に、ボトムアップの形で働きかけます。

認知療法は、考えること・思考することなので、脳の表層に近い前頭葉(前頭皮質)が使われます。情報をトップダウンの方向に管理する働きがあります。

この相互作用により、薬を飲むだけの治療よりも、「自分で(思考を通して)気持ちをコントロールできている」という感覚が高まるため、併用のほうが治療効果が高いのではないかというのが、この記事の見解です。

さらに、ここでは、薬や認知療法はあくまで手段であり、治療効果を生み出しているものは、一体なんなのかということに注意を向けてみたいと思います。

それはつまり、自己効力感(あるいは、症状をある程度自分でコントロールできるという感覚)と感情調整力、そして、よくなるという希望です。

症状に翻弄され、症状に対して無力であると感じている状態から、薬と心理療法の力を借りて、自分で自分の症状に働きかけることができると感じると、回復への道のりに希望が見えてきます。

また、扁桃体(脳幹付近にある感情の発生源)の興奮自体を止めることは難しいことがわかっており、扁桃体の興奮は、前頭葉との相互作用によって抑制されることがわかっています。

進化の過程をみてもわかりますが、猿から類人猿、原人から現代人へと脳の大きさを辿っていくと、この前頭葉がどんどん発達しているのがわかります。

前頭葉はいわゆる、理性や言語を司る部位なので、ここが発達することで扁桃体による本能的な衝動を抑えて、社会的な生活を送るのに適した感情を調整する脳を、現代人が獲得していった歴史が刻まれているのです。

少し話が逸れましたが、うつ病で苦しんでいる人にとって大切なのは、自分の力で症状をコントロールできるのだと感じる自己効力感を高めることと、よくなるという希望が持てること、そして、感情調整の方法を見つけることであると言えるでしょう。

認知療法以外の心理療法、例えば、マインドフルネスや対人関係療法、または弁証法行動療法ではどうか、という疑問が、この記事の最後に投げかけられていますが、上記の3つの条件を満たすことができれば、どの心理療法でも、薬のみの治療以上の効果はみられると思います。