過去にも触れましたが、近年の感情理論においては、ヒトの基本的な感情は、幸せ(happiness)・驚き(surprise)・悲しみ(sadness)・怒り(anger)・恐怖(fear)・嫌悪(disgust)の6つであるとする考えが一般的です。
今回ご紹介する研究は、これら6つの感情をより詳細に分類したものです。
例えば、アイスクリームを食べるときの幸せな気持ちと、サプライズでプロポーズされたときの幸せな気持ちは、同じ「幸せ(happiness)」のスペクトラム上にはあるものの、後者には、「驚き(surprise)」の色合いも帯びているといった、より社会的な感情の性質に関する研究です。
虹も一般的には7色から成ると考えられていますが、その色と色とのあわいには、何とも言えず美しいグラデーションが存在します。原初的な感情は6つと特定されていますが、それらが入り混じることによって、より細かなニュアンスが伝えられます。
この研究からは、ヒトには21もの異なる表情があり、いくつかの感情が入り混じった状態であっても、筋肉の動きによって、どの感情が喚起されているのかが判別できることが明らかになりました。さらに、表情筋の動きのパターンは、230名の被験者に共通していることもわかりました。
表情の共通性については、ポール・エクマン(Paul Ekman)という心理学者が、すでに、表情による感情表出は文化や国籍を超えて共通すると指摘しています。
彼の研究は、海外ドラマ『lie to me』の中でとてもわかりやすく紹介されているので、表情と感情の関連に興味がある方は、一度ご覧になるとよいと思います。ポール・エクマンをモデルにした心理学者をティム・ロスが演じています。
また、記事では、うつ病などの診断に役立つような表情を特定する可能性についても言及されています。確かに、うつ病の方には、フェラグートの皺と呼ばれる特有の表情がみられると言われています。
言葉では言い表せない気持ちも、表情にははっきりと見て取れることも多くあります。SNSの発達で、私たちはすっかり言葉やスタンプでの感情表現に慣れさせられていますが、表情に対する感受性は、鈍らせることなく、いつも磨いておきたいものだと思います。