赤ちゃんが、他者の感情を同定する際の手がかりは、相手の白眼の部分にある。
そんなユニークな研究が紹介されています。
この研究がとてもユニークなのは、ヒトという種が霊長類のなかでも唯一、眼の白い部分がみえる動物であることに注目している点です。眼の白い部分、いわゆる強膜と言われる部分が、ヒトの感情伝達に一役買っているそうなのです。
例えば、驚きや恐怖の表情を浮かべるとき、眼の中の白い部分は広がります。
一方、微笑むときには、眼の白い部分は少なくなります。
また、まっすぐに相手の顔を見るときと、眼をそらしているときでも、眼の白い部分の大きさは変わっているでしょう。
生後7か月くらいの赤ちゃんは、すでに、これらの眼の表情を見分けて、異なる反応を示すことが、今回の研究で明らかになりました。
「彼ら(赤ちゃん)の脳は、確かに、まなざしを媒介に伝えられる社会的な手がかりに反応しています」という研究者のコメントも紹介されています。
乳幼児の発達の理論、あるいは人の心の成長の理論では、タブラ・ラサ(人は真っ新な状態で生まれてくる)という考え方もありましたが、近年では、かなり小さなころから、子どもたちが、他者の表情や声のトーンなどの外的かつ社会的な刺激に敏感に反応したり、それらを弁別している様子がみられることがわかってきています。
言葉というコミュニケーション・ツールをまだ持たない赤ちゃんにとって、こうした視覚的な情報は、むしろ、とても有効な他者とのコミュニケーション・ツールになっていると考えられます。
眼には他にも、魅力的な異性の前では瞳孔が開くことが知られています。
私たちの目は、その持ち主のあずかり知らぬところで、さまざまな情報を他者に投げかけているのです。
日本語にも、「目は口ほどに物を言う」という諺がありますが、サングラスで目を覆うと少しほっとしたような感じがするのは、自分の本当の気持ちや感情を、他者から隠すことができるためなのかもしれません。