Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

共感と社会的パワーバランス

共感能力の高さは、環境によって左右される。そんな研究が発表されました。

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この研究で、共感能力を測る指標となっているのは、“他者が感じている感情を正確に読み取る能力”です。この能力によって、私たちは、相手の感じていることにぴったりな反応をすることができます。

また、環境とは収入の高低を指し、金銭面での格差だけでなく、低収入であるという場合は、治安のよくない場所に住んでいたり、病気になっても十分な医療が受けられないなど、日々の生活において自らの社会的な立場の弱さを実感させられる環境にあることを意味しています。

この研究では、収入が低い人のほうが共感する力が高いという結果が示されたのですが、研究者は、この両者の間の違いを生む要因を、次のように分析しています。

・収入が低い人々は、生活のなかで慢性的に脅威や弱さに直面するため、注意深く他者を観察することを通して、信頼関係や協力関係を構築していこうとする。それによって、感情に対する感受性を高めていくのではないか。

・収入が低い人々は、他者をよく助け、親切である傾向が強い。これは、共感性そのものではないが、こうした性質が共感性の高まりをもたらしているのではないか。

つまり、共感する力は、立場や環境といった社会的な要因に左右されるようなのです。

生きていくうえで自分にとって脅威となる対象があったり、自らを社会的弱者と感じるような環境にいる人ほど、生存や適応のために、感情を読み取る力を必要としており、反対に、その場をコントロールする力があると感じていたり、優位な立場にあることを自覚できる環境にある人ほど、他者の気持ちや存在に注意を払わなくなるのです。

記事では、他に、こうした立場や環境の問題が、一般に男性よりも弱い立場にある女性の共感能力を高める結果につながっているのではないかという指摘や、パワーバランスによって共感能力が左右されるという知見は、リーダー育成の研修にも役立てることができるという可能性にも言及されています。

強い立場にある人は、より共感的になる努力を。

弱い立場にある人も、自分を利用しようとするような相手には、時に共感を手放して自分を守ることを意識する必要があるようです。