「人の気持ちを考えなさい」と教えられて育つ私たちは、自分の中に生まれる「違和感」との向き合い方がよくわからないまま、大人になります。
大学という組織にいた頃、私はどうにも解せない事態に直面し、違和感を抱えることがたくさんありました。
組織の中にいると、こういう飲み込めないことも、飲み込まなくてはいけないのか。
それは嫌だ、したくないという違和感が、個人開業をするという選択の大きなモチベーションになりました。
すべての組織がこうだとは言いませんが、メンタルヘルスの界隈に身を置いていると、デジャヴかと思うほど、こうした話をよく耳にします。
そして、心を病んだ人たちは、こうした飲み込めない事情を無理やり飲まされたり、立場上、自分の心や信念を曲げてまで、それを飲み込もうとした人に多いのです。
違和感に従うというのは、勇気がいることです。
違和感に従って、抵抗した途端、周りに味方がいなくなってしまうこともあります。
違和感に従って、その職を辞そうと思っても、「生活はどうするの」とパートナーに責められたり、自分でもそれを「逃げだ」と感じたりします。
違和感に従って、自分の意見を述べても、「我を通す、協調性のない人間」というレッテルを組織の側が貼ってくることもあるでしょう。
解せないこと、飲み込めないことは、たくさんあります。
それでも、違和感を捨てないことが、やはり大切だと感じます。
違和感に耳を傾けずにいると、人は次第に「自分を見失っていく」からです。
そしてただただ苦しくなり、過呼吸や不眠、気分の落ち込み、職場に行こうとすると足が動かなくなるといった症状を抱えて、精神科や心療内科の門を叩くことになります。
自分の心の中にある違和感は、会社と仕事の往復だけでは、守りきれないことが多いものです。
こんなとき、カウンセリングを利用していただきたいと思います。カウンセリングは、自分の違和感と向き合い、それを抱え続けるための場として、機能することができます。
時折、職場で自らの命を絶つ方がおられますが、その多くは、心に不調をきたした方が、最後の最後に、自らの命を持って、自分の違和感を周囲に伝えようとした行動のように、私には思えます。
それだけ、職場や仕事に対して情熱を持ち、自分の命をかけて「変わってほしい」「このままではいけないんだ」という思いを伝えているのではないかと思うのです。
自分の中の違和感は、自分のいる環境が要求してくるものと、相入れないものが多いかもしれません。
なぜなら、違和感は、目先の現実だけを見ているわけではないからです。
あなた自身のあり方、生き方、人生への問いを突きつけてきます。
どう生きたいのか。
どうありたいのか。
人生において大切にしているものは何なのか。
違和感とは、あなた自身が、自分の人生を主体的に生きようとする力の芽生えなのです。
だから、どうか無視せずに、違和感と向き合う時間を持ってください。
幸か不幸か、今はたくさんの違和感を突きつけられる時代です。
言い換えれば、自分について、たくさん考え、知る機会のある時代なのです。
あなたに違和感を与えた相手や出来事に、反論したり抵抗したりしてエネルギーを使うよりも、まずはあなたの中の違和感に耳を傾けてあげてください。
違和感を感じさせる出来事は、不快ではあるけれど、そこに必ず学びがあると、私は思っています。