Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

喜びという感情の役割

喜びという感情は、基本感情の一つです。

基本感情とは、人が生まれながらにして持っている感情で、それぞれ特定の身体の反応や行動と結びついているという特徴があります。

喜びに特徴的な行動は、「繰り返す」こと。

子どもが面白いこと、ワクワクすることを何度も「やってやって」とせがむのは、喜びのなせる技です。

私は、子どもの頃、絵本を読んでもらうのが大好きでした。

同じ絵本を何度も持ってきては、「読んで、読んで」というので、毎日のことですから、母もくたびれてしまうほどだったと思います。

でも幸い、私は絵本という楽しみを取り上げられたり、「もういいでしょ」「いい加減にしなさい」と、途中で辞められた記憶はありません。

母が疲れたときには、祖母が代わりに絵本を読んでくれましたし、母は、童話や昔話が収録されたカセットテープも買ってくれました。

小学校の低学年くらいの頃まで、私は寝る前に、その中から2つ3つ、寝床に持っていき、枕元に置いたカセットデッキで聴いてから寝るのが習慣でした。

喜びが原動力になった「繰り返し」によって、人は「リソースを獲得する」と言われています。

読み聞かせという形で、ほぼ毎晩、人の感情や、感情を表す言葉に触れたこと。

そのワクワクする経験に、水を挿されることなく、没頭できたこと。

これらは間違いなく、「人の感情に注目して、カウンセリングという好きな仕事ができている」という、今の私のリソースとなっています。

「繰り返し」は同じことをやっているだけですから、一見すると、進歩がないようにも見えるでしょう。

大人のすることでさえそうなのですから、子どもが繰り返しすることや、やってとせがむことはなおさらです。

でも、その中に、その子の将来の選択を大きく左右する「芽」が隠れているかもしれません。

子どもが喜んでやっていることを、現実と折り合いをつけつつ(母が買ったカセットテープのように)、続けさせてあげる方法を、ちょっと考えてみてあげてください。

好きなことを取り上げられずに続けられた。

そのことは必ず、子どもが将来、生きていくための力(リソース)の一部になるはずです。