Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

自己肯定感の守り方:褒め言葉をスルメのように噛み続ける。

初学者の頃というのは、何事も不安なものです。

大学院修士2年生のとき、そして就職して3年目のとき、私は精神分析の大御所に自分のケースを見てもらうという体験をしました。

大学院生の頃の体験はこちらに書きました。

emotion-lab.hatenablog.com

 就職して3年目のときは、学会での事例発表の座長がN先生でした。

私が、恥の問題と見立てたケースの中核的な課題を、N先生は怒りと罪悪感の問題と見立てられました。私にとっては、精神分析的なケースの見方や力動的な見方を学ぶ貴重な機会となりました。

N先生は、学会の場だけではなく、事前に手紙でケースに関するやりとりをしてくださって、そのお手紙は今でも大切にとってあります。

その中に、「椅子のワークでクライエントが鮮やかに変容した」と書いていてくださり、これが、当時の私にとっては大きな自信になりました。

 

若手を育てるとき、ビシビシと厳しくやるのがいい。なぜなら、自分もそうされてきたから。

そういう考えの方もおられるかもしれません。

しかし、初学者のカケラほどの自信を根こそぎ奪ってしまうような指導は、私は、意味をなさないばかりか、その初学者のカウンセラーが抱えた傷つきは、いつかクライエントさんとの間で再演されることになってしまうのではないかと危惧しています。

K先生のときも書きましたが、私の足りない点(怒りと罪悪感に関する精神分析的・力動的理解)を補いつつ、N先生もまた、私の実践の中のよい面を同時に拾い上げてくださいました。

自信がなくなりそうになるとき、私はこのN先生の「鮮やかに」という言葉を思い出しては、自尊心のよすがにしていました。

その言葉を、スルメのように噛み続け(笑)、何度も反芻し、砕け散って粉々になりそうになる自己肯定感を守り通したのです。

だからこそ、まずは10年やってこれました。

与えてもらったことを、今度は自分も与える立場になりました。

先生方ほど上手にできているかはわかりません。

でも、スーパービジョンや教育分析を行うときに、何か後輩たちがこの仕事を続けていく上でスルメのように噛み続ける言葉を、届けることができていたらと願っています。