私は実は、日常場面で自分の職業を明かすのが、あまり好きではありません。
カウンセラーだと名乗った途端に、相手をちょっと警戒させてしまうからです。
「今、心読まれてますか?」
「じゃんけん強いんですか?」
と、聞いてもらえたらまだよいのですが、カウンセラーにはどうやら“メンタリスト”のイメージがあるようなのです。
カウンセラーは心を読むことはありません。ただ、その人が話す言葉だけでなく、表情や姿勢、仕草、態度などから、その人の心の動きを感じ取ろうとします。
聞いてみなくてはわからないこともたくさんありますし、本当に上手なカウンセラーとは、質問しないカウンセラーではなく、質問上手なカウンセラーのことだと思います。
「心読めるんですか?」
この質問に対する答えを、折に触れて考えてきました。
カウンセラーがすることは、心を読むことではなく、心を解(ほど)くこと。
カウンセラーにも、クライエントさんにも、クライエントさんの心がよく理解できるように。
「答えは、出すものではなく、育むもの」という言葉が好きなので、まだ考え続けるテーマだとは思いますが、先日、この答えにたどりつき、少しモヤモヤが晴れたような感じがしました。
人の心は、見透かせるほど単純なものではありません。
いろんな感情や想いや、気持ちが絡まって、一体そこに何があるのかわからなくなっているものを、少しずつほどいて、より分けていくのです。
「これは悲しみだね」
「これは怒りだ」
「これは、自分がしてほしかったことだ」
「これは、自分の気持ちじゃなくて、親から言われたことだ」
ネックレスの鎖も、イヤホンのコードも絡まるとすごく厄介で、イライラしてしまいますよね。気持ちや感情が絡まりあった心も、ほどきにかかろうとすると、すごくエネルギーがいります。
でも、ネックレスやイヤホンのコードと一緒で、ほどけるとスッキリするんです。
ほどけた心は、風通しが良く、快適で、大切なものを入れるスペースが十分あります。
苦労も醍醐味も知った上で、こんなふうに心を解くことを仕事にしているのが、カウンセラーなのだと思います。