Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

インナーチャイルドを癒すのと同じくらい大切なこと。

カウンセリングの中で、クライエントさんと一緒に、見つけ、その声を聴き、抱きしめ、「あなたは大切な人だよ」と伝える存在に、インナーチャイルドがあります。

内なる子ども、子どものパーツ、トラウマを負ったパーツなどとも呼ばれ、私たちの中の“時が止まったままの部分”、“生きることができなかった部分”です。

先日観た映画『トークバック 沈黙を破る女たち』の中でも、ある女性がつらい体験をした10代の頃に自分に手紙を書く場面がありました。


『TALK BACK トークバック 沈黙を破る女たち』予告編

とてもつらい体験をしたら、本当はそれが癒されるまで泣きたいし、気がすむまで泣くのを許してくれる人や、一緒に泣いてくれる人、もしくはあなたがそんなつらい目に遭うことに腹を立ててくれる人に、そばにいてもらいたいものです。

しかし、それが叶わないとき、私たちは「何事もなかったように振る舞う」ことを選びます。

泣いていたら誰かに付け入られそうなときや、悲しむことで非難を浴びそうなとき。

もしくは、泣きたいのは自分なのに、他の人のケアをしなければいけないようなとき。

私たちは、自分の悲しみをそっと押し黙らせてしまうのです。

そうすると、心の中では、その当時の年齢の自分が、抱えきれなかった感情を引き受けます。

そして、カウンセリングなどの安心できる場面で、その頃の自分が出てきてくれるのです。

「忘れてた気持ち、ここに取ってあるよ」

「悲しい気持ち、ずっとここにあるよ。だから、まだ痛いまんまなんだ」

そう言って、解凍していた感情を差し出してくれます。

この当時の自分が、いわゆるインナーチャイルドです。この内なる自分の存在に気付いたとき、多くのクライエントはこう言います。

「ほったらかしにしていてごめんね」

「ずっとそこにいたんだよね」

彼らも決して、内なる自分に気付いていないわけではありません(完全に記憶から消していて、それを思い出すという場合もありますが)。ただ、その内なる自分に向き合うのに、必要な準備が整っていなかっただけなのです。

そんなとき、頼りになるのが、現在のクライエント自身、つまり、“インナーチャイルドをケアしてあげられる大人の自分”です。

インナーチャイルドが癒されることも大切なプロセスですが、“この子の痛みや悲しみを、わかってあげられる自分がいる”という自覚も、クライエントさんをグッと強くしてくれる大切な感覚なのです。

そうすると、インナーチャイルドの傷を“他の誰か”に癒してもらおうとして、傷つくことも少なくなるのです。

「他の人より、自分が一番自分のことをわかってあげられるんだ」

と気づくことができるからです。

インナーチャイルドを癒すのと同じくらい大切なのは、信頼に足る大人の自分の存在に気づくこと。

クライエントさんたちとのセッションを通じて、今日もまたそんなことを教えてもらいました。