カウンセラーの仕事、あるいはカウンセリングと聞くと、人の悩みに寄り添う、話を聞くことで楽になってもらう・気づきを促進する、あるいは、精神疾患を抱える人の治療をするといったイメージが強いかもしれません。
でも、カウンセラーとして、実際にやっていることを思い浮かべてみると、決してそれだけではないなと感じます。
例えば、「話だけを聞いているのではなく、ノンバーバル・コミュニケーションにも注意を払っている」し、ちょっと意外なところでは「相手の魅力に気づいて、それを伝える」ということもやっています。
後者の「相手の魅力に気づいて、それを伝える」というのは、広くはロジャースの言った「肯定」に当たると思います。
例えば、このブログを読んでくださっている方には、すでにバレてしまっていることかもしれませんが、私はけっこうオタク気質です。
臨床心理学に関することでも、有名人でも、音楽や小説でも、ハマるととことん熱中し、友達の集まりなどでも、それについて熱を込めて話してしまいます。自覚もある一方で、そういうのって、一人で盛り上がってるだけで、空気読めないって思われてないかな、と気にしていた部分でもありました。
ですが、あるとき、私がいつものように好きなアーティストの話を熱っぽく話していたときに、付き合いの長い先輩がニコニコ笑いながら、「ほんといい顔して話すよね」と言ってくれたのです。
彼は、私の話の内容だけではなく、話している私の表情やテンション、エネルギーを楽しんでくれて(ノンバーバルへの注目)、さらにそれを「いいね」と言ってくれたのです(相手の魅力に気づいて、それを伝える)。
彼は信頼する先輩でもあったので、私の中ではこれ以降、好きなことを夢中になって話すことに、ためらいや自己嫌悪を感じなくなったし、話した後の一人反省会でも、そのことが議題に上がることはなくなりました。
今、カウンセリングをやっていても、折に触れて、この体験を思い出します。
こんなふうに書くと、カウンセラーの手の内を明かしてるようですが、カウンセラーは人がどうしたら変わるか、どうしたら悩みから自由になれるかという心理学の理論に基づいて、こうしたことをある意味で意図的に行う人たちということができるからです。
あのとき、自分が感じた、くすぐったさにも似たうれしさや自信、そんなふうに思ってもらえるんだという新鮮な驚きを、自分のクライエントさんにも体験してもらえていたらいいなと思います。