「癒し」という言葉は、もうすっかり手垢のついた表現になってしまいました。
それでも、「頑張れ」という言葉がつらいときには、癒しや笑いの力を借りて、エネルギーをチャージすることが大切です。
子どもの頃は、同じことの繰り返しがただ楽しかったり、意味など求めずに遊べたものですが、大人になると、いつしか私たちは、意味や生産性、効率、結果が、自分自身の価値を証明するものだと勘違いしてしまいます。
くだらない会話で笑うこと。
何もしないでゴロゴロ過ごすこと。
天気のいい日にぼーっと外の眺めること。
そんな一見、何もない時間の中で、見つけられることや取り戻せることがあります。
声を出して笑ったのは随分久しぶりだという感覚。
自分の呼吸の浅さに気づいて、深呼吸することもあるでしょう。
空の広さは、自分の悩みは案外小さいものだと思わせてくれるかもしれません。
現代人は、何もしないことを恐れすぎているような気がします。
東京都市大学の広田すみれ氏が、水曜どうでしょうという番組と、そのディレクター陣が作り出した「場」が持つ力について考察した論文があります。
この中で、広田先生がどうでしょうの視聴者に「レジリエンス(困難に耐え、対処する力)」が育っていたのではないかと考察しているのは、とても興味深いです。
何も考えないで、笑ってテレビを見ている時間に、心が少し強くなっている。
それこそ、笑いと癒しのちからだと思うのです。
水曜どうでしょうとともに、個人的にとても好きなのは、幼獣マメシバです。
就労経験もなく、対人関係も築けず、自宅から半径3km圏内で生活し続けているニートの中年男性が、少しずつ社会に向かって行く物語。
もちろん、「働け」とか「お母さんの気持ちを考えなさい」とか、耳の痛いことをいう登場人物もいます。
それでも、寄り添ってくれる犬の存在や、その犬を飼うことから生まれる責任感が、主人公を変えていきます。
とても優しい物語です。
水曜どうでしょうを見ている時間や、幼獣マメシバを見ている時間は、生産的とは言えないかもしれません。
でも、心の滋養が、じわじわと作り出されている時間だと思います。