「コミュニケーション能力がない」という言い方は、個人的にあまりよいとは思えません。というのも、このような言い方は、あたかもコミュニケーションの当事者のうち“どちらか一方”に「コミュニケーション能力がない」ために、会話が成立しないといった印象を受けるからです。
コミュニケーションには、もともと共同・協同という意味合いがあり、伝える努力と受け取る努力という相互協力があって初めて成り立つものです。
しかし、巷には伝え方・聞き方に関する情報が多く、こうした相互協力に関するテーマは割と少ないように感じられます。

「聞く技術」が人を動かす―ビジネス・人間関係を制す最終兵器 (知恵の森文庫)
- 作者: 伊東明
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
コミュニケーションを「相手が努力すること」あるいは「自分が努力すること」といった片方からの視点だけから捉えるのではなく、相互協力という視点から捉えると、言葉が交わされる前の段階で、もうひとつ大切なことがあることに気づけるかもしれません。
それは、相手と自分というコミュニケーションの当事者が、互いに安全感・安心感を感じられる関係を築けているかどうかということです。
コミュニケーションとは、お互いがテーブルについて向き合ったときに初めて生まれるのではなく、普段の接し方やかかわり方のなかで、すでに育まれているものなのかもしれません。
ある方が「相手の中に聞く耳を育てることが大切」と教えてくださいました。
自分が伝えたいことがあっても、相手にも“それを聞く耳”がなければ伝わらない。
コミュニケーションを相互協力として捉えていらっしゃるからこそのお言葉だろうと思いました。
ちなみに、この言葉を教えてくださったのは下記の著者でした。
くずかごの中に吐き出された言葉たちが、それを“聞ける耳”との出会いによって詩となり、多くの人に共有されていく。それがコミュニケーションの原点なのかもしれない。
そんなことを考えさせてくれる一冊です。